【おススメドラマ】Netflix『阿修羅のごとく』は企画・プロデューサーの八木康夫氏の実力を見せつけた「歴史に残る名作」だ
Netflix『阿修羅のごとく』は7話だったが、一気見だった。
目が離せなかった。まず、あの4姉妹(宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず、敬称略)をキャスティングした企画・プロデュースの八木康夫氏の力量に感服だ。
私は現役時代に、石原さとみ氏主演、岡田惠和氏脚本の『人生最高の贈りもの』で八木氏とご一緒したが、このときも石原さとみさんのキャスティングを決めてきてくれたのは八木氏だった。知る人ぞ知る八木康夫氏はすごい人なのだ。
TBS時代には、田村正和氏の転機となった『うちの子にかぎって…』や『パパはニュースキャスター』に始まる数々のドラマを手掛け、日本のホームドラマを牽引した。現在73歳だが、とてもお元気で活動されていて、その企画力、キャスティング力には定評がある。
話は戻るが、前述の4姉妹をキャスティングした段階で、すでにこのドラマの「勝ち」は見えていた。是枝裕和氏もこのキャストだから監督を引き受けたのだと実感した。それほどまでにこの4姉妹が素晴らしかった。4人が集合して何気ない話や起こった問題について話をするシーンが何度も出てくるが、それが秀逸なのだ。
「歴史に残る作品」と言っても過言ではないだろう。
4姉妹のシーンについては前述したとおりだが、ほかにも特筆すべき点が多くある。特に、「徹底した時代再現」には拍手喝采だ。1970年代を描いているが、遊園地の復元などは見事だった。この70年代の再現ぶりや、ところどころにインサートされる時事や人物を楽しめるだけでも、この作品を見る価値はある。すべての時代考証にここまで非がないのは『海に眠るダイヤモンド』を凌駕している。
そして何より、「家族とは何か」「親子とは」「姉妹とは」といった普遍的なものごとについて深く考えさせられた。ドラマのなかでも出てくる、一番〝憎らしくて〟〝愛おしい〟存在が、家族や親子、姉妹といったものなのだろう。
以上のように〝人生についての提示をしてくれる〟〝非の打ちどころのない〟作品だが、そんな完璧な作品だからこそ、あえて指摘しておきたい点もある。それは以下の2点だ。
1.「男性側」の描き方がなおざり/これは、向田邦子作品のリメイクということで仕方がない部分もあるが、あの4姉妹はとても強くて男性陣にとっては「脅威」であろうから、事実はもっと「暴力で片を付ける」というようなことがあったと思う。総じて男性がおとなしく、良い人で「はい、はい」と女性陣の言うことを聞いているのが気になった。これはいまの時代の風潮を加味してのことなのかと思った。70年代はもっと「家長制度」がはびこっていた時代ではないかと思うので、そのあたりの描き方に違和感を抱いた。だが、これも逆に考えれば、これまで70年代の描かれ方というと、父親が威張っていて「ちゃぶ台ひっくり返す」というようなステレオタイプであったので、「これはこれで新しいのかもしれない」とも思えてくる。
2.「理不尽」ではなくすべてが「妥当」/1.に関連するが、あの時代はもっと「理不尽」な多く起こっていたはずなのだが、その多くが「美談」に置き換えられている点が惜しいと思った。しかし、この点においても、八木氏と是枝氏という〝強力な〟布陣なのだから、何か意図があるに違いない。浅はかな私が、そこまで読み取れていないのだろう。
以上、あえて私が気がついた点を挙げたが、この作品の素晴らしさは変わらない。4姉妹どれもよかったが、個人的には、特に尾野真千子氏、本木雅弘氏がうまかった。「名人芸」と言ってよい。
皆さんもぜひ、ご覧いただきたい。
「Netflix」公式HPより