【おススメ動画】映画『ホランド』のニコール・キッドマン×Netflix『セイレーンの誘惑』のジュリアン・ムーア~往年のハリウッド女優の生きる道
AmazonPrimeで映画『ホランド』を、Netflixでリミテッドシリーズ『セイレーンの誘惑』を続けて見た。これには意図的なものがある。両者とも往年のハリウッド女優が主演をしている作品であり、そんな彼女たちが作品のなかでどんなドラマツルギーを担うのか、またいまどんな演技をするのか、比較をしたいと思ったからだ。というのも、日本では過去に大きな栄光を得た俳優がたどるのは、「主演」ができなくなると、キャリアがある俳優が最後に表示される「トメ」という立場に移行してゆく。これは特に配信化の流れが激しくなったころから顕著になった。「キャリアがあっても、若く人気がないと配信が回らない」という変な理由でそんな道を強いられるのだ。
『ホランド』は、ニコール・キッドマン氏主演のホラーミステリーで、ミシガン州ホランドの町を舞台に、主人公ナンシーが夫の秘密を知ったことで完璧だった生活が崩れてゆく様を描いている。「家庭の崩壊」と人間の「心理的な闇」をテーマとしていて、「表面的な幸福」とその裏に潜む「不穏な真実」を対照的に描いている点が優れていると感じた。表面的な幸福は静かな町の美しい風景として表現され、不穏な真実は時々挿入される刺激的で印象的な映像で表現されていた。この映画のキッドマン氏は、見事だった。徐々に追い詰められていく主人公を繊細に演じ、鬼気迫る雰囲気が素晴らしかった。エンディングの解釈は・・・ネタバレになるので、やめておこう。
一方、『セイレーンの誘惑』は、ジュリアン・ムーア氏が演じるカリスマ的な富豪ミカエラを中心に、ギリシャ神話のセイレーン伝説を再解釈した心理サスペンスで、権力と姉妹愛をテーマにしている。上流社会の闇をブラックユーモアと心理サスペンスを交錯させながら描く異色作であり、ムーア氏は、魅惑的で危険な女性ミカエラを見事に演じ切った。このミカエラになければならないのは「カリスマ性」だが、彼女の演技には観る者を惹きつけるカリスマ性があり、強い存在感を放っていた。
近年、ハリウッドでは年齢を重ねた女優が活躍できる場が広がりつつある。キッドマン氏とムーア氏は、単なる「往年の女優」としてではなく、キャリアの新たなフェーズに入り、より深みのある役柄を演じることで、映画界における存在感を維持している。キッドマン氏は、歳を重ねて逆にとげとげしさがなくなって深みが増したくらいだ。彼女たちのような女優が活躍し続けることで、映画業界全体の多様性が広がり、より豊かな作品が生まれるのではないだろうか。
日本においても同じように、キャリアを経た俳優をうまく活用してゆく考え方はないものか。もったいない……。
