【おススメ映画】山崎エマ監督ドキュメンタリー映画『小学校~それは小さな社会~』を見てきた~山崎氏との「奇縁」と作品の「3つの特筆すべき点」

以前このブログでもお知らせした山崎エマ監督のドキュメンタリー映画『小学校~それは小さな社会~』が横浜で上映初日だというので早速、見てきた。東京では年内から公開が始まっていて、見た知人の評判も良かったので楽しみにしていた。しかし、それ以上に、山崎監督と私の間にはいろいろ奇縁があることがわかってきたため、ますます「早く作品を見たい」という逸る気持ちが募っていた。
「いろいろな奇縁」とは何か。〝いろいろ〟と言っても2つだけだが。

1つ目の奇縁・・・上記の以前に書いた私のブログを山崎監督が読んでくれた。そして山崎氏は、私が出演したNスペのディレクターの中川雄一朗氏に連絡した。というのも、私は気がつかなかったが、このNスぺを編集したのは山崎氏だったからだ。そして中川氏から私に連絡が来て、山崎監督の「4日に直接会えるのを楽しみにしている」という言葉を伝えてくれたのだ。
2つ目の奇縁・・・年末に俳優の田村亮夫妻とお会いした。田村夫妻は公私ともに私を気にかけてくださっていて、私は田村亮氏出演の海外ドキュメンタリーシリーズや田村氏の父である阪東妻三郎氏のドキュメンタリーを制作している。その田村氏の奥様が「この間、『小学校』というドキュメンタリーを見たけどよかった」と仰ったのだ。私は「え?どうして?」と思って聞いてみると、山崎監督も阪妻のドキュメンタリー映画を作ったというではないか。田村夫妻と山崎氏はそのとき以来のお付き合いだという。
そんな2つの奇縁があって、期待はますます膨らんでいた。そして、今日・・・涙が止まらなかった内容もさることながら、山崎氏をはじめとするスタッフと子どもたち、先生たちの頑張りに心打たれたからだ
映画館は都合がいい。周りの目を気にせずに涙を流せるからだ。そんな自分の感情を〝素直に〟出すことができる作用があったという意味において、この映画の素晴らしさが実証されるだろう。特筆すべきは3つである。

1.よくぞ撮った。まずは許可取り、この大変さを私は身に染みて知っている。そして長期密着。この途中で心がめげそうになる感じも知っている。この作品は、この2つを成し遂げている。教育委員会や学校の信頼を勝ち取り「全面協力」という免許を皆伝された。見事だ。そしてそのあとも、妥協することなくすべてのシーンに寄り添っている。群像劇の場合の主役は、最初からはわからない。長い間撮るからこそその人物の個性が見えてくるのだ。そのためにはなるべく多くの子どもたちを撮り、そのなかから絞り込んでいかなければならない。もちろん、捨てる素材の方が多い。作り手にとって「わが子」のような映像を捨てる作業は苦しくてつらい。しかし、それは「産みの苦しみ」なのだ。この作品はその「産みの苦しみ」をちゃんと経験している。だから、いい作品になっている。
2.子どもたちとの距離感。近いから「つぶやき」や「ひとりごと」「ぼやき」もぜんぶ録れる。私はドキュメンタリーの肝は「その人物の同録のしゃべり」だと思っている。人間の「本音」が出るからだ。よくぞあそこまで近づいた。近づくといっても、子どもはやすやすとカメラを近づけさせてくれない。そこには大人だと何となく許してくれる「忖度」や「容赦」はない。子どもは正直だ、嫌なものは嫌で、無理に近づいても本音は聞かせてくれないし、逆に「本当の姿」を隠してしまう。それは日本だけでなく秘境の子どもたちも同じだ。私はそれで数多くの「痛い目」にあってきた。この作品の子どもたちは〝積極的〟で〝饒舌〟だ。日本風のドキュメンタリーの作りだと、「最初は打ち解けてくれない子ども☛徐々にカメラに素顔を見せてくれるようになった」のように情緒的に構成してしまうところを、山崎氏のある種いい意味での〝日本的でない〟構成が小気味よかった。
3.Bロールの絵が効果的。「Bロール」とはメインのストーリーを構成する映像以外の部分を指す。例えば、話の間にインサートされる何気ない風景やシーン変わりのカットである。この作品は恐らく、メインで子どもたちに密着するカメラマン以外に実景カメラマンを立てているのではないか。そしてそのBロールの絵がとてもいいタイミングで挿入される。編集を知り尽くした山崎氏ならではの手法だと言えるだろう。

もうひとつ、この作品が得をしていると思うことがあった。見ていて私はある番組を思い浮かべていた。日本テレビでいまでも続く『はじめてのおつかい』である。ご存じのようにこの番組は、幼い子どもが親からお願いされた初めての「おつかい」に挑戦する様子を描いたものだ。この番組が30年以上続いている要素が今回の山崎氏の作品にはある。「がんばれ!がんばれ!」と子どもの挑戦を応援したくなるという日本人の感情の土壌がすでに作られていたというわけだ。だから、縄跳びやシンバルに挑戦する子どもたちに、私たち大人は涙しながら応援をする。
以上、ほめることばかりを書いてきたが、実を言うと「ここはこうでは?」や「こうしたほうがよかったのでは?」と思うことも多々ある。当たり前だ。ドキュメンタリーとは作り手の思いや考えを形にするものだ。山崎氏と私の思いや考えが同じだとつまらないし、気持ち悪いだろう。だから、この場では批判的なことは書かないことにする。
それは山崎氏にこっそりとメールすることにしよう。

舞台挨拶をする山崎エマ監督

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