【おススメ書籍】NHK朝ドラ『虎に翼』でも話題となった「家父長制」ーアンジェラ・サイニー著『家父長制の起源』が教えてくれる「アンラーン(学び壊し)」の大切さ

アンジェラ・サイニー著『家父長制の起源』を読了した。
今年放送されたNHK朝ドラ『虎に翼』でも登場人物たちが真っ向から議論するシーンが注目を集めた「家父長制」。男性が女性を支配するこの体制は、日本だけでなく世界の多くの地域でみられる現象だ。私はドキュメンタリー制作の過程で、世界の様々な場所で「家父長制」や「一妻多夫制」「一夫多妻制」などの婚姻制度を照射してきたため、興味を持ってこの本を手に取った。
この家父長制はいつ生まれ、いつから始まったのか?
そんな根本的な疑問に答えるべく、サイニー氏は最新の科学、考古学、人類学などの成果をもとに、歴史を紐解き、世界各地を訪ね、様々な人物に取材をしてゆく。その手法は、まさにドキュメンタリーを制作していた私の手法と同じだと思った。
本書を読んで、改めて感じたのは、常識や固定観念、先入観を捨て去る「アンラーン」がいかに大切かということだ。
私たちはいま自分が生きている時代や場所の状況しか見えない。だから、今見ている世界が「常識」だと思い込んでしまう。本書はそれを思い知らせてくれた。
「家父長制」は「伝統」という大義名分を振りかざし、「選択」という道を閉ざしてしまう道具であった。この道具はときに「万能だ」と思わさせられるときがある。「男性は女性よりも強くて賢い」「DNDに刷り込まれていた」「実際のいまの社会がそうだから」……という理由は「神話」でしかないにもかかわらずだ。
本書を読んで、いかに家父長制が「まやかし」であり、その時代、その場所において、ときの為政者に〝便利に〟利用されてきたかという実例を目の当たりにすることができた。
一番印象に残った事例は、序盤でかなりの紙面を割いているトルコの古代遺跡チャタル・ヒュユクでは、男女の差や役割分担がほぼなかったという事実だった。だとすれば、いま私たちが直面している「家父長制」は「もともとあったもの」ではないということだ。彼らの間には、ジェンダーの意識が全くなかったというのも興味深かった。
そして、「格差」が生まれてから「ジェンダー」という意識が生まれたという著者の主張にも納得がいった。
なかなか想像力がかきたてられる書籍だった。
皆さんも新しい年の始めに、アンラーンしてみてはどうだろうか?

photo: gregobagel/ Getty Images

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