【おススメ舞台】本学・桜美林大学による『群読音楽劇 銀河鉄道の夜』――命の重みが揺らぐ時代に、「命の列車」に乗るという意味を問う

本学・桜美林大学の教員でもある演劇プロデューサー・能祖將夫氏の脚本・演出による舞台『群読音楽劇 銀河鉄道の夜』を観た。何より印象的だったのは、この舞台が単なる学内発表にとどまらず、学生・卒業生・地域市民という「三者の協働」によって創り上げられている点である。出演者はオーディションによって選ばれ、プロのアーティストと初舞台の市民キャストが肩を並べる。中学生の参加もあると聞き、舞台芸術の裾野の広さと教育的意義に深く感じ入った。
この舞台のもう一つの特徴は、群読・音楽・ダンスが融合した「独自のスタイル」にある。単なるジャンルの混合ではなく、それぞれが互いを引き立て合い、見事な調和を生み出していた。40人を超えるキャストが一堂に会し、同時に演技を繰り広げる群読劇は、圧倒的な迫力をもって観客を包み込む。3時間弱という長丁場にもかかわらず、時間の流れが加速するような没入感があり、優れたエンターテインメントとは何かを改めて考えさせられた。
演出面では、能祖氏の力量が際立っていた。一人でも和を乱す存在があれば舞台は崩れる。にもかかわらず、すべてのキャストが高い水準で統一されていたことは、氏の指導力の賜物である。プロの出演者がいる一方で、初舞台の市民キャストも多く含まれていたことを思えば、その演出力は驚嘆に値する。
物語の核となる「銀河鉄道」は、命を運ぶ列車として描かれている。それぞれの乗客が異なる人生や悩みを抱えている。家族を失った者、過去の失敗を悔いている者、それでもなお生きていこうとする者。列車が力強く進むように、人生のレールを歩み続ける姿が描かれる。観る者に「生きる勇気」を与える舞台であり、その力は、まさにこの作品に宿る倫理的緊張感によって支えられている。
命をめぐる問いが、群読と音楽とダンスの交錯のなかで立ち上がる。本学・桜美林大学が創り上げた『銀河鉄道の夜』は、いまこの時代にこそ乗るべき「命の列車」なのかもしれない。世界では今もなお、紛争や差別、命を軽んじる出来事が絶えず起こっている。そうした現実の只中で、この舞台が命の尊厳を描き出すことには、深い意味がある。
能祖氏の演出は、単なる物語の再構成ではなく、「今ここで語るべきこと」として、命の列車の旅を私たちに差し出しているのだ。
なかでも特筆すべきは、神田初音ファレル氏のダンスと浜まゆみ氏のマリンバ/パーカッションである。ファレル氏のダンスには人生が垣間見られた。彼は列車に乗るすべての乗客の物語を、身体表現によって描き出した。浜氏のマリンバは、どの場面にも自然に溶け込み、命の列車の旅に深みと余韻を与えていた。
空間構成にも触れておきたい。この舞台は円形舞台で上演され、観客席が舞台を囲むように配置されている。観客は物語の中心にいるような感覚を味わい、舞台との距離が限りなく近づく。能祖氏は、劇団四季在籍時に青山円形劇場の空間演出に携わった経験を持ち(※参考:『劇団四季の軌跡』青山円形劇場における演出記録)、その成果と実績が本作にも存分に生かされていると言えるだろう。
以上のように、群読・音楽・ダンスの融合、三者協働のキャスト構成、円形舞台という空間設計──そのすべてがこの作品を「オンリーワン」の存在にしている。明日までの公演とのこと。当日券であっても、この命の列車の旅に立ち会う価値は十分にある。ぜひ、劇場でその瞬間を目撃してほしい。
チケット予約☛https://www.confetti-web.com/events/9400

「桜美林大学」公式HPより
https://www.obirin.ac.jp/event/year_2025/lo4e4n0000054oxv.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です