【今日のタブチ】「〝他人に迷惑をかけない〟人になること」をわが子に期待する親たち~子どもは迷惑か?「子持ち様」「子育て罰」という言葉が表す現代社会の病巣
日本の子どもや若者が他国の同世代と比べて「自己肯定感」が低いことは、これまでのさまざまな国際比較調査で明らかになっている。これは、親としてそして大学教員として見逃せないテーマだ。気になって独自に研究している最中ではあるが、現在のところは大きく3つの要因があると考えている。
1.家庭教育への意識の違い
2.社会の不寛容さ
3.「子育て」をする人へのバッシング
まず1.だが、「他人に迷惑をかけない人になること」をわが子に期待する意識が日本は突出して高いことが日本心理学会の研究ほかシンクタンクなどの調査で明らかになっている。もちろん、悪いことをしたりして迷惑をかけることは論外だが、あまりにも子どもが外で迷惑をかけないかと過敏になりすぎて、子どものやることを否定してしまっていないだろうか。これは、親子とも両方を苦しめる。
2.だが、「子どもがうるさいから」と保育園の建設が反対されたり、講演が閉鎖されたりすることが増えている。「子どもは宝」と言いながら、大泣きしている子どもには厳しい目が向けられる。これは現代社会の「病巣」と言っていいだろう。子どもの声は「騒音」なのか。隣近所の付き合いの有無と騒音苦情の件数の関連を分析したところ、付き合いのある割合が通常の2分の1になってしまった場合には苦情件数は8倍に膨れ上がったという。「孤独」や「孤立」は「不寛容」を生じさせる。
3.に関しては、最近SNSで氾濫している「子持ち様」や「子育て罰」などの傾向を指す。「子持ち様」は子育て中の親が職場や公共の場で特別扱いを求めているとみなされる際に使われるネットスラングだ。「子育て罰」はキャリア停滞や経済的負担など子育てをすることで親が社会的・経済的に不利な状況に置かれることを指す。まったくの「驢鳴犬吠」だ。労働経済学者・佐藤一麿氏は「子どものいる女性はいない女性よりも幸福度が低い」と指摘している。また「さらに子どもの数が増えるほど幸福度は下がる傾向がある」とも述べている。これはなぜなのかを、私たち全員、社会全体で考えるべきだ。
まずは、私たちひとりひとりが〝寛容的で〟ありたい。そして、教育者としての視点からは、高校や大学のキャリア教育のなかで「子育ての負担」への理解を深めることや子どもや若者たちに「もっと大人に迷惑かけてもいいんだよ」と伝えてあげるということを提案したい。
「TBS NEWS DIG」より