【今日のタブチ】「やっぱりか……」と落胆するのは、ジェンダー論ではない――“明白”となった高市内閣の“危ない”4つの方針

「やっぱりな……」と、今朝の新聞を読んで落胆した。
それは、一時期は選出が危ぶまれた高市氏が“女性初の首相”に就任したからではない。
「女性かどうか」は関係ない。むしろ、どうでもいいことだ。論点はそこではなく、組閣によって高市内閣の4つの方針が明白になったことへの落胆である。

第一に、裏金・献金問題を“屁とも思っていない”姿勢が露呈したこと。副大臣や政務官などに、裏金問題に関与したとされる議員を7人も起用している。これは、政治倫理に対する感覚が麻痺しているとしか言いようがない。
第二に、労働政策の方向性だ。高市氏は自民党総裁選後のスピーチで「ワークライフバランスという言葉は捨てる」「働いて、働いて、働く」「自民党員には馬車馬のように働いていただく」と発言した。この言葉は、働き方改革の流れに逆行するものとして物議を醸した。にもかかわらず、組閣後すぐに上野厚生労働相が「労働時間規制の緩和」の検討を指示したという報道がある。高市氏は「これは私自身の決意表明であり、国民に強いるものではない」と釈明したが、その舌の根も乾かぬうちの政策転換に、呆れるしかない。
第三に、外国人施策の問題だ。文部科学省の調査によれば、義務教育段階にある外国籍の子どもで、国公私立の小中学校や外国人学校に通っていない「不就学」の子どもが、2024年5月時点で1097人と初めて千人を超えた。教育は人間の将来を左右する重要な権利であり、国際人権規約でも外国籍の子どもに就学の保障が求められている。人口減少が進む日本において、外国人の労働力は不可欠であり、彼らの子どもたちが教育から排除されるような状況は、社会の持続性を損なう。高市内閣は「外国人との秩序ある共生社会推進担当相」を新設したが、これが形骸化するようでは本末転倒である。
第四に、防衛費の問題。臨時国会で予定されている所信表明演説には、防衛費をGDP比2%に引き上げる方針を2年前倒しで実施する原案が盛り込まれているという報道がある。これはあまりにも性急であり、国民への丁寧な説明が欠かせない。防衛政策は国の根幹に関わるものであり、拙速な決定は信頼を損なう。

これら4つの方針が示すように、高市内閣は多くの問題をはらんでいる。これは「女性初」といったジェンダー論と同じレベルで語られるべき話ではない
にもかかわらず、マスコミはいまだに“女性初の”や「ガラスの天井」といった表現を繰り返す。もういい加減に、高市氏が女性であることから離れて論じるべきではないか。
政治の本質は、性別ではなく政策にある。マスコミには、ジェンダーの象徴性に頼るのではなく、政策の中身にこそ光を当てる報道姿勢が求められている。
そうでなければ、「女性初」や「ガラスの天井」といった言葉は、単なる飾りに終わってしまう。
真の「男女参画」とは、性別にかかわらず、誰もが政策の中身で評価され、責任を問われる社会のことだ。
その実現のためにも、私たちは「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」にこそ、目を向けるべきではないか。

「東京新聞デジタル」より


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です