【今日のタブチ】「サイボーグ昆虫」で被災者を捜索~マダガスカルゴキブリを電気の刺激で操るという発想に脱帽する

広島大大学院の小蔵正輝教授(制御理論)が加わる研究チームが、生きたゴキブリに超小型の電子装置をつけた「サイボーグ昆虫」を群れで移動させる制御プログラムを開発した。ゴキブリはマダガスカルゴキブリと言って、体長が5cmから大きいものでは10cm近くにまで至る。
ゴキブリというと私たちは台所やゴミのなかでガサゴソしている〝汚い〟害虫のイメージがあるが、実は世界中のゴキブリの99%が害虫ではなく、人家に住みつくこともない。マダガスカルゴキブリは森や床に生息し、落ち葉や倒木の堆積物の下に隠れていて、夜になると活動が活発になりエサを漁る。主食は果実や草花だ。
このマダガスカルゴキブリに関しては、私には思い出がある。マダガスカルの希少な動物や生態系を紹介するドキュメンタリーを作るために現地を訪れた際のことだ。マダガスカルには石灰岩の大地がところどころに広がっていて、なかでも特に有名なのが「ツィンギ・デ・ベマラハ」というものである。この地域はユネスコの世界遺産にも登録されており、鋭く尖った石灰岩の峰が特徴的だ。
ツィンギ・デ・ベマラハの形成は数百万年にわたる風雨や地下水の侵食によるもので、多くのユニークな動植物が生息している。そのひとつが、マダガスカルゴキブリだ。ツィンギ・デ・ベマラハにある巨大な洞窟を探検したときのことだ。漆黒の闇に包まれたなかを進み、天井をライトで照らし出したとき、私たち撮影班は思わず「あっ!」と声をあげた。天井には、「フルーツバット」と呼ばれフルーツを主食とする「オオコウモリ」が肩を寄せ合うように無数にいたのだった。甲高い「キキキ」や「チーチー」といった鳴き声に交じって、下の方からは「シュッシュッ」という違う音が聞こえる。「何だろう」と思ってライトで足元を照らすと、一面にマダガスカルゴキブリの群れがあった。
「飛び上がらんばかりに驚く」とはまさにこのときのことを表す。度肝を抜かれた。なんとマダガスカルゴキブリは気門から空気を出すことで音を発すると後で知って、脊椎動物に似たその生態にさらに驚かされたことを思い出す。
話を戻すと、このマダガスカルゴキブリの背中に小型コンピューターや無線を受信するアンテナ、バッテリーを装着して、感覚器官に電気で弱い刺激を与えることで動きを操って、障害物が多い被災地などの現場で被災者の捜索活動に役立てるという。
昆虫の機動性と、少量のエネルギーで長時間動くことができるという利点はロボットに勝るという。
ポイントは「群れとして制御できるかどうか」だと聞いて、なるほどと思った。個々では微々たる力でも、群れとなると大きな力を発揮できるし、正しい方向や行動を認識するリーダーがいれば、群れは効果的に動くだろう。
生物と共存して暮らしを豊かにする、そんな技術の開発には大いに期待したい。

科学技術振興機構HP「Science Portal」より

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