【今日のタブチ】「ボーカルサイレンサー」と「VTuber」の意外な関係―オーストラリアの「YouTube規制」に危惧する子どもたちの「義侠心」
「ボーカルサイレンサー」なる商品が売れているという。一見するとメガホンか検査機器のようにも見える物体で、口元に当てて大声を出しても、その声が遮音されるというものだ。値段もなかなか高価で、税込28,600円。商品名は「ヴォイシーズ」。
さて、これは何のためのツールなのか。用途は、声楽家が時間や場所を選ばずに練習できるようにとのこと。開発したのは音楽のプロフェッショナル集団というから、音楽家たちの切実な悩みを解決する製品なのだろう。「なるほど」と頷いた。
だが、ここで取り上げたいのは、むしろその“先”の話だ。本来はそうした使い方が想定されていたこの商品が、意外にもVTuber界隈で人気を博しているというのだ。
深夜に動画を生配信することが多いVTuberにとって、周囲への騒音は悩みの種だった。ところが、この商品にマイクを差し込んで配信に臨めば、防音対策になると好評だという。開発者がまったく想定していなかった層に売れているという点で、意外なニーズがヒットにつながる好例だ。
YouTube関連の話題といえば、オーストラリアでの規制も見逃せない。
アルバニージ首相は、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止という世界初の法律の適用範囲にYouTubeを新たに加えた。TikTokやFacebookなどはすでに対象となっていたが、これにより16歳未満の子どもはYouTubeの動画こそ視聴できるものの、動画投稿やコメントが禁止されることとなる。運営元のGoogleは法廷闘争も辞さない構えで、事態は物議を醸している。
政府側は、YouTubeが個人の嗜好に基づいたデータを収集していることを問題視しているようだ。もちろん、ショート動画の連続再生による中毒性の高さや、暴力的なコンテンツから子どもを守るという目的には一定の理解はできる。だが、「すべてを禁止すれば解決」といった発想は、どこか短絡的で、強権的な印象を免れない。「これは独裁国家の手法では」と感じる人もいるだろう。
禁止されればされるほど、やりたくなる――そんな子どもたちの義侠心、すなわち理不尽に抗いたいという内なる正義感を、逆に煽ってしまう可能性もある。そして、多感な時期に育まれるべき探究心を、制度が無自覚に削いでしまう懸念もある。
社会全体がもう少し、“子どもに優しい”仕組みを模索できないものか――その問いは、規制と自由のあわいにこそ立ち現れるべきなのではないか。
「インターネットコム」HPより
https://internetcom.jp/208805/voicease-on-makuake