【今日のタブチ】「乗っ取りノウハウ」の裏に潜む社会:成年とSNSの危うい接点から見えるもの~私たちは子どもたちに何を与え、何を奪っているのか

兵庫県姫路市で起こった、ある高校生によるインスタグラムアカウントの乗っ取り事件。16歳という年齢、そして「不正アクセス禁止法違反」と「詐欺」の容疑という事実は衝撃的だが、その背後には、現代の情報社会が抱える深い闇が透けて見える。
少年は「インスタグラムの乗っ取り方法を教えます」と謳う投稿にアクセスし、「氏名と生年月日がアカウント名の場合、パスワードも同様であることが多い」という「ノウハウ」を受け取ったという。このことは、サイバー犯罪の技術的側面以上に、現代のコミュニケーション環境と倫理観の変容を映し出している。
かつてのSNSは「日常を共有する場」だった。しかし今や、その一部は「情報交換の裏市場」と化している。犯罪の手法が「知識」として伝達される構造は、情報の民主化と同時に倫理の希薄化をもたらしている。未成年者が簡単にアクセスできる場所に、違法なノウハウが漂っているという現実は、「開かれた社会」の副作用と言えるのかもしれない。
この事件から見えてくるのは、アカウント名として「氏名+生年月日」を使用することが、無防備な状態であるにも関わらず慣習的に行われているという事実だ。これは単なる技術的失策ではなく、セキュリティの意識が文化的に根付いていないことを示している。プライバシーの概念がどこか遠くのものとして扱われているという日本社会の特徴なのかもしれない。
高校2年生という年齢は、倫理観や判断力が発展途上にある時期だ。そのなかで、オンライン上の「教えられる犯罪」に何の疑問も持たず実行してしまう若者が現れることは、教育の機能不全を物語っている。家庭・学校・地域のどこで、そしてどのようにして、ネット社会に対応した道徳教育がなされるべきなのか。これは教育者だけでなく、メディア運営者、政策立案者、保護者にとっての問いでもある
この事件は、単なる個人の過ちではない。それは、現代社会が作り出した「無自覚に手を染めてしまう構造」の一端なのだ。SNSは善にも悪にもなる―その分岐点で、私たちは子どもたちに何を与え、何を奪っているのか。そう問いかけずにはいられない。

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「産経新聞デジタル」より

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