【今日のタブチ】「刑務所」から「ラスベガス」へ─持続可能性と高齢者ケア~社会施設の〝実験的な〟最前線とは?

今日は、日本の社会施設で始まっている〝実験的な〟試みの最前線をお知らせしたい。
まず一つ目は、自然環境や動植物との共生の視点を更生プログラムに取り入れた「グリーン・プリズン」である。これは、日本では例えば、財団から少年院が保護犬を譲り受けてトレーニングし、新たな飼い主へ譲渡するという「保護犬育成プログラム」などを、八街少年院(千葉)や浪速少年院(大阪)などで実施しているが、多くは少年院に限られてきた。米国ワシントン州矯正局とエバーグリーン州立大が共同で運営する受刑者更生のプログラム「刑務所における持続可能性プロジェクト」(SPP)では、保護犬などの世話や訓練をして社会に戻したり、絶滅危惧種の昆虫やカメなどを保護し回復させて自然に放つものなど160プロジェクトがあり、ワシントン州内の刑務所10カ所で採用されている。しかも、入所者が考案したプログラムもあり、入所者がどれを受講するか選ぶ。
自然と接することで不安レベルが下がり、攻撃性が減少したり、自分は存在してもいいという自己肯定感を得ることができるという。「懲役」という懲らしめから、学びを進める「拘禁刑」が施行されて8月でまもなく2カ月だ。動植物や自然と交流することで受刑者の更生につなげる。素晴らしい試みだと思った。
そして二つ目は、カジノ風の内装や設備を整え、カードゲームやマージャンなどのレクリエーションを提供するデイサービス「町田のラスベガス」だ。正式には「ラスベガス町田木曽」と言うが、東京都町田市の住宅地の一角にある平屋建ての外観は、ごく普通のデイサービス施設のようであって駐車場の雰囲気はやや異なる。車体に「Las Vegas」と書かれ、まるでカジノの送迎車のような黒塗りの車両が並ぶ。こちらも発想はアメリカにあやかっている。運営会社のトップが、米ラスベガスで高齢者がカジノに興じる姿を見かけたことから発案したという。玄関の黒っぽいドアは、いかにもカジノ風。扉が開くと、約100平方メートルの場内に、カードゲームの台やマージャン卓、パチンコ、スロット機器、カラオケ用の個室、シアタールーム、リクライニングシートなどが設置されている。天井にはシャンデリア風の照明。スタッフが黒や濃紺のネクタイ、ベスト姿で行き交い、雰囲気もカジノ風にこだわっている。こんな場所なら、行ってみたい。
厚生労働省は、利用者の孤独感解消や心身の機能維持、家族の介護の負担軽減などの効果を挙げる。「従来のデイサービスではできない好きなことをさせてもらっている」「来るのが楽しみ」と好評だという。これも素晴らしい試みだ。
どちらも、「発想の転換」から来たアイデアだ。刑務所は罪を償うところ、デイサービスは時間をつぶすところ、という固定概念や偏見を取っ払って考えたところに新しさがある。そうやって考えていくと、まだまだ改善できることやものが、社会には数多くありそうだ。

「東京新聞デジタル」より

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