【今日のタブチ】「命の尊さ」を伝えたい~ヤギの姉妹「メイ(命)」と「ゆい(結)」を飼う喫茶店店主の〝尊い〟思い
JR戸塚駅に隣接する場所でヤギの姉妹を飼っている喫茶店店主の話が新聞に載っていた。ひょうきんな表情が乗降客の目を和ませ、ご当地ソングでも紹介されるなど、地域の人気者になっているという。
店主は片山大蔵氏というが、その飼育のきっかけを聞いて感服した。
10年前に区内の高校生が家族2人の命を奪った事件。それを知り、「子どもたちが生き物と触れ合える情操教育の場所が必要」との思いを強めて、知人から姉妹の子ヤギを譲りうけた。2匹で「命を結ぶ」という意味を込めて「メイ(命)」と「ゆい(結)」と名付けた。
ヤギが情操教育に役立つという研究はいくつかある。
1.大学でのヤギ飼育と教育
宮城教育大学では、ヤギの飼育を通じて生命教育の重要性を研究している。ヤギの世話をすることで、学生が生命の循環を体験的に学び、動物との関わりを深めることができるとされている。
2.小学校でのヤギ飼育と気付きの質の向上
新潟県の小学校では、ヤギの飼育を通じて子どもたちの主体性や協働性を育む取り組みが行われている。ヤギの世話をすることで、生命を尊重する態度や他者意識が育まれることが研究で示されている。
3.ヤギの癒し効果に関する研究
愛知ヤギ農場では、ヤギが人間に与える癒し効果について科学的に立証し、学会で発表している。ヤギを見たり触れたりすることでストレスが軽減されることが確認されており、情操教育にも良い影響を与える可能性がある。
ヤギの飼育は、生命の尊さを学ぶだけでなく、子どもたちの社会性や感受性を育むのに役立つことが研究で示されているのだ。
また、ヤギにまつわるポジティブなことわざや逸話もある。
1.「ヤギのように粘り強く」(英語圏の表現)
ヤギは険しい山道でもしっかりと歩き続ける動物であり、その粘り強さや忍耐力を称える表現として使われる。
2.「ヤギはどんな岩場でも道を見つける」(アフリカのことわざ)
これは「困難な状況でも解決策を見つけられる」という意味を持つことわざで、ヤギの優れた登攀能力を人間の知恵や適応力になぞらえている。
3.「ヤギのミルクは健康の源」(地中海地域の言い伝え)
ヤギのミルクは栄養価が高く、古代から健康に良いとされてきた。特に地中海地域では、長寿の秘訣とされている。
また、ヤギは神話や宗教にも頻繁に登場する。例えば、北欧神話ではトールの戦車を引くヤギが、食べても翌日には蘇るという不思議な力を持っていたとされている。これはヤギが「再生」や「豊かさ」の象徴とされていることを示している。
1.「アマルテイアの角」(ギリシャ神話)
ゼウスが幼少期に育てられたヤギ「アマルテイア」は、彼にミルクを与えたとされている。ゼウスは感謝の印として、ヤギの角を「豊穣の角(コルヌコピア)」に変え、持つ者に無限の富と食物をもたらす力を与えた。これはヤギを「命を育む存在」としての象徴と考えることの表れだ。
2.「トールのヤギ」(北欧神話)
雷神トールの戦車を引くヤギ「タンングニョスト」と「タンングリスニ」は、食べられても翌日には蘇る力を持っていた。この伝説は「命の循環」や「再生」の象徴とされ、生命の尊さを示している。
3.「ヤギの犠牲と救済」(アフリカの民話)
ある村で飢饉が起こった際、村人たちは最後のヤギを食べるかどうか悩んだ。しかし、ヤギが村の子供たちにミルクを与え続けたことで、村は救われた。この話は「命をつなぐ存在」としてのヤギの役割を強調している。
私が頻繁に訪れていたヒマラヤ地域でも、ヤギは人々の生活に密着していた。現在私が非常勤で通っている相模女子大学の小学部ではヤギを飼育している。総合学習の一環としてヤギの世話をして、ヤギとの触れ合いを通じて思いやる心やお世話する喜びを学んでいる。ヤギの名前は「バニラ」だ。晴れた日には大学グラウンドで子どもたちと遊ぶ様子が見られることもある。
そういえば、テレビ東京にも『ヤギと大悟』という番組があったなぁ。
「神奈川新聞カナロコ」より