【今日のタブチ】フジテレビ「検証番組」にいまだ見られる「隠蔽体質」と「ことなかれ主義」~「美談」や「トカゲの尻尾切り」にしか見えない~本当にフジテレビは再生する「覚悟」があるのか?
7月6日㈰放送のフジテレビ検証番組を見た。
まず感じたのは、強い違和感だった。
「この番組の目的は何か?」そう疑問に思ったからだ。今回の問題を検証するものではないのか。私には、物事を収束させようと「トカゲの尻尾切り」をしたようにしか見えなかった。
すごく大雑把にまとめれば、番組の構成は以下の通りだった。
なぜこういう問題が起きたのか。いろいろな社内の証言を経て至った結論は・・・☛港元社長と大多元専務という「バブル期の象徴」のようなセクハラ体質の人物がいたからだ☛そしてその人物を重用していた日枝体制のせいでもある☛フジテレビはそれを一新してゆく☛現場も社員も、そして新入社員ですらも一人も内定を辞退することなく一丸となって頑張ってゆくので、ぜひフジテレビを応援してほしい
よくできた筋書きだ。構成としては完璧だろう。しかし、本当にそれでよいのか?
私は自分の役目をこう位置付けている。テレビの歴史の半分以上の37年間業界にいて、あらゆる「清濁」を知っているからこそ、いま離れた立場になったから変わることや見えることがある。それをあえて厳しく述べる立場だと。それは、テレビに滅びてほしくないと思っているからだ。だから、あえて言う。
昨日の検証番組は、一定の評価はしたい。時間をかけて綿密に調査をおこなったことも認める。だが、方向性を間違っていないか? 「木を見て森を見ず」ではないのか?
なぜ、そう思ったか?
それは、最後の部分の清水社長の言葉を聞いたときに「あれ? なんか変だぞ」と思ったからだ。
清水氏はこのようなことを言った(あくまでも要約である)。「勢いのあったフジテレビが視聴率も低迷したときに、かつてのヒットメーカーの人々に救いを求め、彼らを会社のトップに据えた。そのことが間違いだった」これは、港氏と大多氏のことを指していることは一目瞭然だ。
番組はほとんど港氏と大多氏のインタビューで構成されていた。港氏がいまだに、港会の参加者が「異常だった」と感じていたことに異を唱えていたことや大多氏が終始「はい、はい、全部否定しません。言われればそうです」と開き直った態度であったことは、驚きでしかないが、そういった部分を〝意図的に〟編集しているということもあるのではないか。
すなわち、あの番組は「トカゲの尻尾切り」だ。すべてを日枝氏、港氏、大多氏に押し付けて、再生をアピールしようとしている。本当に大事なのは何なのか?
日枝氏のような「モンスター」や港氏や大多氏のような「勘違いトップ」がいたとしても、その下の経営陣や上層部がしっかりしていれば、違った結果になったのではないか。さらに言えば、あの事件があそこまでおおごとになり、被害女性をさらに傷つけるようなことは防げたのではないか。問題はそこだ。
なぜ、当時の経営陣は日枝氏に何も言えなかったのか、そして上層部はなぜ歯向かえなかったのか。その一番大切な部分が曖昧にされたまま、番組は「禊」のようなかたちで放送された。「日枝氏が独占体制を敷いていた=日枝氏が怖かった」では子どもの同然だ。もっと根本的な理由があるだろう。
そのことをしっかりと見極めておかないと、また同じようなトップや独裁者が生まれたときに、フジテレビは同じ状況に陥ってしまう可能性があるのではないか。
上層部のなかには、しっかりと顔出しをしないでインタビューに答えたり、質問に回答したりしていた人がいた。もちろん、プライバシー保護は大事だ。だが、それはこちら側が気をつけること。本人が自己責任で顔出しして語れば問題はないはずだ。なぜ、彼らはしっかりと名前と顔を明かして証言しないのか。
その行動からは、少なくとも私は「覚悟」は感じ取れなかった。
本当にフジテレビは再生しようという覚悟があるのか。少なくとも社員や上層部、当時関与した人々のインタビューからはそれは見えてこなかった。また、清水社長が述べる言葉やプランは素晴らしいものが並んでいる。だが、清水氏自身も、日枝氏に重用され、そのことで異を唱えることができなかった者たちの一人ではないのか。そのことに関する釈明はなかった。
以上の理由で、私は昨日の番組はフジテレビの「美談」を見せられたとしか思えなかった。
「yahoo!ニュース」より