【今日のタブチ】制度の「闇」を見逃すな!――“ネット出席制度”と“ゼロワン地域”が突きつける《無関心という罪》
20年も前から制度があるのに、誰も知らない。誰も動かない。そんな「異常」が、私たちの社会には静かに潜んでいる。
不登校の小中学生がオンライン教材で自宅学習すれば、一定の要件を満たした場合、学校長の判断で出席扱いにできる――「ネット出席制度」。2005年から運用されているにもかかわらず、昨年度この制度を利用して出席扱いになったのは、わずか全体の4%足らず。さらに教材会社の調査では、保護者の9割が学校からこの説明を受けていなかったという。驚くべき数字だ。制度はある。20年も経っている。それなのに、なぜ周知されていないのか――。
いや、その前に考えてほしい。文科省の最新調査では、不登校の小中学生は過去最多の約30万人に達している。高校生も含めると40万人規模だ。さらに、通信制高校の在籍者は26万人を超え、そのうちネット型は急成長している。現実は、すでに「教室に行かない学び」が広がっているのだ。こうした数字を見れば、ネット出席制度を推進しないことの方がナンセンスだ。
理由は明白だ。制度設計が曖昧で、学校長の裁量に委ねる仕組みになっているからだ。現場に「判断リスク」を押し付ける構造では、学校側は消極的になる。説明も後回しになる。さらに、文科省から教育委員会、学校、保護者へと情報が伝達される過程で、肝心な部分が希薄化する。現場の教員自身が制度を知らないケースも少なくない。加えて、「学校に来ることが前提」という価値観が根強く、オンライン学習を正規扱いすることへの抵抗感がある。責任回避の心理も働く。出席扱いにした結果、学力不十分や進学トラブルが起きたら、誰が責任を取るのか――そう考えた瞬間、現場は動かなくなる。
一方、全国の地方裁判所の支部管轄内に事務所を置く女性弁護士が0人か1人しかいない地域、いわゆる「ゼロワン地域」が、全203支部のうち少なくとも38道府県の102支部に及ぶことが、共同通信の調査で明らかになった。性被害やDVなど、女性同士でなければ相談しづらい事案に対応できていない可能性がある。これもまた、制度の「闇」だ。
なぜこんなことになっているのか。弁護士は都市に集中し、地方は事件数が少なく採算が取りづらい。法曹界全体で女性比率がまだ低く、地方勤務はキャリア形成や家庭事情との両立が難しい。公的な配置義務やインセンティブもないため、地域格差が放置されてきた。性被害やDVの相談ニーズは高いのに、供給がない。結果、泣き寝入りが発生する。
両者に共通するのは、「制度はあるのに機能していない」という現実だ。制度が死んでいる。存在しているのに、誰も知らない。誰も動かない。こうした「無関心」が最大の罪だ。私たちはまず現状を知ること。そして、その「異常さ」に敏感になること。見逃してはならない。こういった状況を助長するのは、私たちの沈黙だ。
ネット出席制度も、ゼロワン地域も、どちらも弱者を置き去りにする構造を抱えている。制度を作っただけで終わりにしてはいけない。実効性を担保する仕組みが必要だ。学校長の裁量に頼らず、全国統一ガイドラインを整備し、保護者への説明を義務化する。女性弁護士の偏在には、国や弁護士会による配置義務やオンライン法律相談の強化が不可欠だ。
「制度の闇」は、私たちの無関心によって深くなる。あなたの地域はどうか。あなたの学校はどうか。あなたの周りに、見えない格差はないか。問いかけたい。無関心でいることが、一番いけない。
「TBS NEWS DIG」より



