【今日のタブチ】愛鳥週間に思う:消えゆく「スズメ」や毒が失われた「シロツメクサ」~都会化や環境変化が生物に与える影響は「進化」か「絶滅」か?
今日5月10日から愛鳥週間が始まる。私の家の前の藪からも、数日前までウグイスが清らかな美声を聞かせてくれていた。
しかし、近年は「鳥離れ」が進んでいる。1979(昭和54)年には鳥をペットとして飼っていた人は37.6%でトップの犬(46.1%)に次いで2位だった。だが、2010年の最新の統計によると5.7%まで落ち込んでいる。
そんななか、地球温暖化の影響で「スズメ」が一年に3.6%の割合で減っているという。そしてこの「スズメが消えるかも」という生態系の変化が、自然界の食物連鎖に歪みを生じさせ、私たち人間の暮らしにもかかわってくるかもしれない。現に中国では、スズメを稲作の害鳥として大量に殺したところ、害虫が大発生して、飢饉の一因になった。
そして東京などの都市の環境変化や地方の都市化が、生物の「進化」にも影響を与えているという。
クローバーとも呼ばれる「シロツメクサ」はもともと、シアン化水素という毒を作る性質を持っている。だが、農村部から都市部になるにつれ、この毒性が失われてゆく傾向にあることがカナダ・トロント大と北海道大などの国際チームによって判明した。これは都会の環境に適応したシロツメクサの「進化」と言えるだろう。都市環境では植食者の圧力が低いため、毒性を持つ必要がなくなり、結果として毒性を失う進化が促されたのだ。
そして、このことは自然界や私たちの生活にどんな影響をもたらすのか。それは大きくわけて以下の3つがある。
1.ミツバチへの影響
2.生態系への影響
3.私たちの生活への影響
1.についてだが、植物の受粉に重要な役割を果たすミツバチはシロツメクサの蜜を好んで集めため、シロツメクサはミツバチにとって重要な蜜源の一つとなっている。その毒性が低下することで、ミツバチにとってより安全な環境になる可能性がある。また、シロツメクサの進化が蜜の成分や花の構造に影響を与える場合、ミツバチの採餌行動や受粉効率に変化が生じるかもしれない。
2.だが、毒素の生成に使わない分のエネルギーを成長に使えば、シロツメクサの繁殖は他の植物に比べて有利になる。また、シロツメクサの毒性低下は、植食者(昆虫や草食動物)との関係にも影響を与える。シロツメクサを食べる動物が増えると、食物連鎖のバランスが変化する可能性がある。
3.の人間への影響だが、シロツメクサの進化は、都市の緑地管理や農業にも関係する。例えば、都市部でのシロツメクサの増加がミツバチの生息環境を改善し、養蜂に好影響を与える。その一方で、毒性が低下することで、シロツメクサを食べる害虫が増え、農業に影響を及ぼす可能性も考えられる。
都市化による植物の進化は、単なる環境変化ではなく、生態系全体に波及する重要な現象だ。今後のさらなる研究によって、より詳細なことが明らかになることを期待したい。
都市化によって進化した動物もいる。ロンドンの地下鉄には、通常の「イエカ」とは異なる「チカイエカ」が生息している。この蚊は地下鉄の閉鎖的な環境に適応し、地上の蚊とは異なる繁殖習性や吸血対象を持つようになった。また、シンガポールでは都市環境に適応した「イエガラス」が観察されている。都市部では騒音や人間の活動が多いため、鳴き声の周波数を変化させることでコミュニケーションを取るようになった。
いやあ、興味深いテーマだなぁ……。生きものはやっぱりスゴい!
これからの時代は「STEM(科学・技術・工学・数学)」が不可欠だと言われているが、「都市生物学」ももっと注目されるべきだ。
「公益財団法人 日本鳥類保護連盟」公式HPより
令和7年度 愛鳥週間用ポスター原画コンクール『総裁賞』
群馬県前橋市立粕川中学校2年 松島遥野さん作品