【今日のタブチ】更生保護施設の予算を削ってまで、「武器」と「イベント」に金を注ぐ――この国の《優先順位》は、いったいどこへ向かっているのか?

更生保護施設自立準備ホームが資金難に苦しんでいるという記事を読んだ。更生保護施設とは、刑務所を出た人が社会復帰するための支援を受ける場所であり、自立準備ホームは、住居や仕事のない人が一時的に生活しながら自立を目指す施設だ。いずれも、社会の「再出発」を支える重要なインフラである。
ところが、2025年度の更生保護施設関連予算は約53億円。前年度より8900万円も減額されている。これは単なる数字の話ではない。支援を必要とする人々の「命綱」が細くなっているということだ。全国102の更生保護施設が加盟する連盟は、法務省に対して「存続が危ぶまれる」として緊急要望書を提出した。
現場では、仮釈放者の約3割が更生保護施設に帰住しており、その多くが高齢者や累入者(刑務所入所が複数回の人)である。特に、4回以上の入所歴を持つ人の割合は年々増加しており、処遇が困難なケースが増えている。こうした人々に対して、宿泊・食事の提供だけでなく、社会生活技能訓練(SST)や薬物依存回復支援など、専門的な支援が行われている。
しかし、委託費は1人1日あたり宿泊費703円、食事付きでも2037円という水準で、昭和58年の生活保護基準を根拠に据え置かれたまま。物価高騰の現代において、これはあまりにも非現実的だ

一方で、軍事費はうなぎのぼりだ。2025年度の防衛予算は過去最大を更新し、約7兆円規模に達している。2020年からの推移を見ても、毎年数千億円単位で増加しており、F-35戦闘機の追加購入や長距離ミサイルの整備など、攻撃的な装備への投資が目立つ。
さらに、東京オリンピックでは当初予算7340億円が最終的に1兆6440億円に膨れ上がり、大阪万博も当初の1250億円が現在では約2350億円に倍増。名古屋で予定されているアジア大会も、当初予算の3.5倍に達する可能性があると報じられている。
これらのイベントは「国の顔」としての役割を担うかもしれないが、果たしてそれが社会の根幹を支える仕組みよりも優先されるべきなのか。見栄えのするイベントや軍備の拡張よりも、社会の足元を支える仕組みにこそ、もっと予算を割くべきではないか

「再出発」を支える施設が資金難に陥っているという現実は、社会の成熟度を問う鏡でもある。誰もが一度はつまずく可能性がある社会で、立ち直るための場所があるかどうか。それが、私たちの社会の「本当の強さ」ではないだろうか。

「ABCテレビニュース」より

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