【今日の新聞から】「極旨」ならぬ「獄旨」の監獄メシ
岡崎医療刑務所で法務技官を務める栄養管理士の黒柳桂子氏の取り組みに目が留まった。
受刑者と食事づくりに奮闘する日々を『めざせ!ムショラン三ツ星』にまとめたという。
おわかりのように「ムショラン」は「ミシュラン」にかけている。私が大学時代に刑法のゼミに所属して、学外授業で刑務所見学を頻繁におこなっていたことは、本HPの「回想と思い出」でも述べたとおりである。
豚肉と野菜のピーナッツ煮やイカフライレモン風味などおいしそうなメニューを受刑者の炊場係と開発したという。刑務所というと「くさいメシ」というイメージがつきまとうが、その先入観を変える意味ではとてもいい試みだ。また、「受刑者の人権」という視点からも、受刑者であったとしてもこういったちゃんとした「美味しい食事」を食べる権利がある。
皆さんは「アニマル・ウェルフェア」という言葉をご存じだろうか?
家畜目的の牛や豚などの動物にもきれいな場所でストレスなく飼育される権利があるとされる考え方で、欧米などでは浸透しているが日本でも徐々に周知されつつある。もちろん、動物と人間を一緒にはできないが、昨日の「昨日のタブチ、今日のタブチ」に記した「障害者は周りに感謝しろ」「悪人は電車に乗るな」といった自分にとって目障りな他者を排他しようとする考え方を改める意味でも、今日の「監獄メシ改善プロジェクト」は称賛に値する。
と同時に、一点の危惧を〝あえて〟述べたい。
私が高齢初犯をテーマにしたドキュメンタリーで刑務所を取材したときのことだ。受刑者に実際にインタビューをしたのだが、彼らの言質からこういった高齢者のなかには刑務所に入りたいがために再犯を重ねる者がいるという現実が明らかになった。刑務所は「3食昼寝付き」、こんな快適な場所はないという。今回の「監獄メシ改善プロジェクト」を知って、「そんな旨いメシが食えるなら」という不届きな考えをする者も出てこないとも限らない。そういった懸念をどう払拭してゆくかといったことも、片方で考えなければならないのではないかと提言したい。
2013年12月15日(日)/30分枠 24:59~
『あなたは、なぜやったのですか? 増え続ける高齢初犯』
日本テレビ「NNNドキュメント」HPより