【今日の新聞から】「18禁」激辛ポテトチップス事件に隠された「危険なことやもの」が「売りもの」になる傾向~「辛いもの」を食べる本当の理由を考える

東京都の高校1年の男女14人が「18禁カレーチップス」を食べて、口や胃の痛みを訴えて病院に運ばれるという事件があった。SNSでは辛さを我慢して食べる動画が流されるなど、近年のネット上の「危険なことが売り物になる」傾向に私は危惧を感じている。
海外では辛すぎるものを食べた少年が死亡するという事件も起こっている。
本来「辛いものを食べる」という行為は、ネットでバズるためや度胸試しのためではない。世界の様々な場所では、「必要に応じて」辛いものを食べているという現状がある。
「辛味」は「味覚」ではなく、「痛覚」や「温覚」だということを理解するべきだ。つまり「痛い」のだ。痛いことが激しすぎるとどうなるかは言わずもがなだろう。


今日は、私が海外ドキュメンタリーで訪れた国々の「辛いもの巡り」のなかから「辛いもの」を食べる本当の理由や必要性について述べてみたい。
辛いものの代表的なものと言えば唐辛子だが、唐辛子にはカプサイシンという辛味成分が大量に含まれている。カプサイシンは食物の腐敗や食中毒の予防になるため、気候が暑い国では辛いものが好まれる。辛い料理で最初にあげられるのはやはりカレーだろう。ビーフマサラ、マトンパンジャビー等の辛いカレーがある。タイにはプリッキーヌと呼ばれる激辛唐辛子があり、トムヤムクンやガパオなどの辛いタイ料理に使われている。東南アジアなどの暑い国で香辛料たっぷりの激辛料理が好まれるのは、「辛いもの」を食べて汗をかき体温を下げるためだと言われている。逆に、寒い場所でも辛いものがよく食べられるのは、代謝が上げて身体を温めるためだ。どちらも「必要に応じて」である。


そして今回紹介したいのは、ブータンの料理だ。
ブータンは「これまでいった国でどこがおすすめか」と聞かれたら必ず私が挙げる国だ。いままで5回ほど訪れている。ブータンは急峻な山岳地帯にある国で、育てられる野菜は限られていた。そのような環境でも育ったのが唐辛子で、野菜代わりに唐辛子を食べていたためブータン人には辛さの抵抗が少なくなった。一週間に一家族で消化される唐辛子の量はなんと1キロ以上とも言われるほど、ブータン人は唐辛子好きだ。その「唐辛子好き」にも理由がちゃんとある。
ブータンの代表的な料理に、食べた後に辛さが来る「エマ・ダツィ」と呼ばれる料理がある。
エマは(唐辛子)、ダツィは(チーズ)という意味で、唐辛子をそのままチーズで煮込んだものだ。その辛さは癖になる旨さで、ブータンの赤米によく合う。
ブータンは国土の大半が高地である。その高地において唐辛子は呼吸器系の機能を補うという効能がある。唐辛子を食べると、副腎(腎臓の上にある臓器)からアドレナリンが分泌される。このアドレナリンは別名「興奮ホルモン」とも呼ばれ、発汗を促し、脂肪やエネルギーの代謝を活発にする働きがある。高地に住む人々ならではの智慧であり、必要に応じて唐辛子という「辛いもの」を食べているのだ。

以上に述べたように、「辛いものを食べる」という行為は、面白半分や興味本位で「挑戦する」ようなことではない。ネットでバズるためや度胸試しのためでもない。世界では、〝必要に応じて〟「辛いもの」を食べているという事実を私たちはしっかりと認識する必要があるのではないか。

ブータンの伝統料理「エマ・ダツィ」
「ナショナルジオグラフィック日本語サイト」より

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