【今日の新聞から】子どもたちや学生が学びやすい環境を作るのは、大人の「役目」

今朝の新聞からは「教育ネタ」を2つ、挙げたい。

まずは、不登校の要因に関する文科省の調査で、学校側と児童・生徒の意識のズレが明確になったというニュースだ。
学校への調査では「いじめを認識している」のはたった4%だったが、肝心の児童・生徒側は26%も「いじめの存在を感じている」という。この差は大きい。
これは、私も含めて世の教育者がしっかりと向き合うべき現実だ。

NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表理事で、自身も「うつ病」であることをオープンにしている評論家の荻上チキ氏は「学校は、子どもたちが理不尽さに耐える場所ではなく、安心できる場所に変わるべき」と訴える。
荻上氏は自分のいじめられていた経験を挙げて、学校に行かない空白期間があることは、子供の将来にとって不利益となることもあると証言している。これは、当事者の意見として貴重だ。加えて、不登校の場合の親の心的・経済的な負担も指摘している。

メディアはよく「自殺するくらいなら逃げろ」と報じる。確かにこれは正しい。だが、その考え方が行きつく先は自己責任論だ。その前に私たち教育者や親ができることがあるはずだ。子どもにとって学校を「安全な場所」に変える。ストレスが少ない環境に改善する。それが大人の役目だろう。もちろん、「教えている方が偉い」「教わっている方は謙虚に」「だから、ある程度我慢が必要」という前時代的な考え方が愚かであることは自明だ。

大学の現場などでは「昔と違って、学生は〝お客様〟みたいだ」と皮肉を言う教員もいる。しかし、私はこれは間違っていると思う。「お客様」だから大事にするのではない。「地球の未来の宝」であるから、大事にするのだ。そしてそれ以上に言えるのは、「子どもが〝学ぶ権利〟」という人権をまっとうできるように大人が環境を整えるのは当然のことなのだ。

そして2つ目の記事は、昨年4月に首都圏の私大に入学した新入生のうち、自宅外通学者の生活費は月平均1万9600円だったことが、東京私大教連の調査でわかったというものだ。
これは仕送りから家賃を引いた額で、平均すると一日653円で暮らしている計算になる。これでは厳しい。というか、無理だ。予定しないお金が必要になったときには対応できない。
本学の私が所属する専修(本学桜美林大学は、「学科」ではなく「専修」と呼んでいる)にも多くの新入生が入ってきた。ちょうど、昨日、1年生のオリエンがおこなわれたが、希望に燃えるその顔には「不安」が入り混じっているのも伺えた。親元を離れ、遠く大都会東京(本学のキャンパスの周りはのどかな風景が広がっているが)で初めて暮らすことへの心配や心もとない気持ちで胸がいっぱいであることだろう。
そんな不安な気持ちを少しでも払拭させてあげるのが、私たちの「役目」であり「責任」だ。東京私大教連の執行部は、「多くの学生は生活のために長時間アルバイトをせざるを得ない」として、学費や奨学金返済の負担軽減、私学助成の増額などを国会に求める署名を集めるという。

昨日のオリエンでも、私のアドバイジー(本学には、一人ひとりに「アドバイザー」と呼ばれる教員がつく手厚い制度がある)の学生が「相談があるんですが」と言ってきた。「やっぱりパソコンは買った方がいいでしょうか?」という質問だった。
私は「うちには教室ごとにたくさんのパソコンがあって、授業のときも『一人1台ずつ』という恵まれた環境にあるから、本当に自分のプライベートPCが必要かどうか、授業が始まってみてゆっくり考えたらいいんじゃないかな。それで本当に『必要だ』と思えば買えばいいよ、いまから慌てて買わなくていい」と答えた。すると学生は、不安いっぱいだった顔を輝かせてとても嬉しそうに「わかりました。ありがとうございます!」と言って帰って行った。

話は少し飛躍するが、リニア新幹線構想に関しては私は持論がある。
リニア新幹線の実現に向けての研究が始まったのは、なんと昭和37(1962)年。私が生まれる2年も前だ。そしていまだに問題山積みだ。その予算は7兆円に膨らんでいる。
現在2時間20分かかる東京ー新大阪間を1時間にする目標は、昭和37年当時から変わらない。しかし、その間、随分時間は短縮されていった。私が生まれた昭和39(1964)年は4時間だった。4時間を1時間に短縮できるなら意味もあっただろう。だが、2時間20分を1時間にしたところでどうなんだと私は思う。
「初志貫徹」……60年以上も続けている国家的なプロジェクトを頓挫させるわけにはいかないというわけか。日本人の悪い癖だ。一度決めたら途中でやめられない。
やめる勇気も必要なのに。

その予算7兆円を、いじめの対策、一人暮らしの学生たちの援助、に充ててほしい。ついでもトマホークを買うお金も。
そう願っているのは私だけだろうか。

「アルシーセキュリティブログ」より
https://www.alsi.co.jp/security/blog/article/2927/

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