【今日の新聞から】映像の「三方よし」を考えない困った人たち

近江商人の経営哲学に「三方(さんぽう)よし」という言葉がある。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という3つの「よし」を指し、商売において売り手と買い手が満足するのは当然のことで、社会に貢献できてこそよい商売であるという考え方だ。
私は常々、映像においてもこの「三方よし」が必要だと主張している。
例えば、これをテレビに置き換えてみよう。この場合の三方とは、「創り手(役者や制作者など)」「スポンサー」「視聴者」となる。スポンサーの利益だけを追求してもダメだし、創り手の都合だけでも成立しない、視聴者が満足するだけでも意味がないということだ。
そして、三方よしの一番はもちろん、「視聴者」だ。そして同時に、番組を作っているクリエイターたちのためでもある。またビジネス的や産業的には、スポンサーや企業のためという考え方もあるだろう。つまり、本来テレビ番組はさまざまな立場の人たちにとってのものであり、それらみなの思いや言い分が均等に保たれていて、全員が「ウィンウィン」になるのがベストだ。(以上、1月11日発売『混沌時代の新・テレビ論』より抜粋https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784591180297)

映像はこのテレビ番組の例のように、映像の「送り手」「受け手」のためにならなければならない。さらに、「社会」のためになって初めて「三方よし」を実現できるのだ。

この「三方よし」の真逆をやっている輩がいる。今朝の新聞にまたユーチューバーの話題が出ていた。50代の男性に覚せい剤を所持していると言いがかりをつけ、「交番行きましょう」と言って馬乗りになって拘束する様子を撮影してユーチューブに投稿していた。「三方よし」の考え方からまったく外れた、誰のためにもならない「クズ映像」を流して、映像という文化を冒涜しないでほしいものだ。
この不届き者たちのおこないと相反するような素晴らしい試みの記事を見つけた。ANAがインターネット上の仮想空間「メタバース」で国内外の観光名所への旅を疑似体験できるサービスを始めた。コロナ禍で出かけるのが億劫になったり臆病になった人も多いだろう。そういう人たちにとっても外に出かけることなく、旅行や買い物を楽しめる。
これこそが、「三方よしの映像作り」と言えるのではないだろうか。拍手喝采したい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です