【今日の新聞から】東京都葛飾区が区立中学などの修学旅行を無償化ーその有意義な試みに隠されたある「事実」

東京都葛飾区は来年4月から、区立中学校の修学旅行や小学校の林間学校など、宿泊を伴う移動教室を無償化する方針を示した。物価高やインバウンド(訪日客)需要の高まりでの交通費と宿泊費の高騰を受けた施策であると発表している。この有意義な試みは東京23区内では初めてであり、評価に値する。
では、それによってどれくらいの費用がかかるのか。例えば、中学3年生を対象とする約2900人で、主に京都、奈良を訪れる2泊3日の修学旅行の交通費や宿泊費を1人当たり保護者負担約8万円で試算すると、約2億3200万円が必要だという。
葛飾区は物価高やインバウンド(訪日客)需要の高まりを理由として挙げているが、この施策にはある見逃せない「事実」が隠されているということに気がつかなければならない。また「たかが8万円が出せないのか」というふうに考えるのは浅はかだ。

それは、「子どもの貧困化」だ。
厚生労働省が2023年に公表した報告書によると、日本の子どもの相対的貧困率は11.5%(2021年)である。「相対的貧困率」とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調節した所得)の中央値の半分に満たない17歳以下の子どものことを指す。つまり平均より所得が低い家庭の子どもという意味だ。11.5%ということは、日本の子どもの約9人に1人が相対的貧困状態にあることを示している。また、2014年のOECD(経済協力開発機構)のまとめによると、日本では、ひとり親家庭の相対的貧困率が50.8%と、OECD加盟国33カ国中、最も高い割合になっている。
日本では、家庭の経済格差などの家庭環境によって、子どもの教育格差が生まれているのだ。そしてその事態は、大学進学にも影響を与えている。四年制大学進学率を世帯収入別に見てみると、世帯収入の多寡で34.6ポイントもの差が生じている。*出典:小林雅之、濱中義隆(2022)「修学支援新制度の効果検証」『桜美林大学研究紀要 総合人間科学研究』第2号,52-68頁より

「貧困」と聞くと、私たちはついアフリカやグローバル・サウスの貧困地帯の様子を想像しがちだ。しかし、「貧困化」は行ったこともない知らない国の話ではない。身近に潜んでいる問題なのだ。

「NHK首都圏ナビ」HPより

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です