【今日の新聞から】私情を抑えた拉致被害者の母の想い

今朝の「筆洗」に、北朝鮮の拉致被害者の母、寺越友枝氏の話が載っていた。13歳のときに拉致された我が息子に24年ぶりに会ったときのエピソードが書かれていた。「親が言うのはおかしいかもしれませんが」と前置きして、母は息子を「いい男だ」とほれぼれしたという。いい話だ。その寺越氏が亡くなった。訪朝は66回にも及んだらしい。
続いて述べられていた話に落涙を禁じえなかった。異国で一定の地位と家庭を得ている息子を見て、母は思ったという。

「自分が『拉致だ。返せ』と言えばどうなるか」

想いを飲み込んで、自分が通えば会える。葛藤の末、そう思うことにしたという。66回もの訪朝はそのためだ。
母親の想いを考えて胸が痛くなった。と同時に、改めて北朝鮮による拉致がどんなに許せないことかと感じた。
いまから24年前の2000年に私は、『知られざる韓国をゆく』という当時はまだBSジャパンと言った現・BSテレ東のレギュラードキュメンタリーシリーズを制作した。2カ月間かけて韓国中を回りながら、計8本、9時間のドキュメンタリーを作り上げた。その際に、韓国と北朝鮮の国境地帯DMZを取材した。そしてある日突然、北と南に分断され、離れ離れになってしまった家族を取材した。韓国側で、いつか会えると信じる家族を待つ老婆が主人公だった。彼女は我が子に会えただろうか。そんなことを思い出した。

国家の都合で小さな幸せが犠牲になる。そんな出来事は、いま世界にあふれている。でも、そんなときでも「もっといいことがあるはずだ」と信じて生きたい。そう強く感じた。

「Yahooニュース」より

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