【今日の新聞から】秘中の秘「工芸官」という存在

今朝の新聞で、紙幣や印紙などのデザインをして印刷するための原版を作る「工芸官」という仕事があることを知った。
紙幣の場合はデザイン担当と彫刻担当にわかれるという。 デザイン担当者はお札の図柄を考え、筆と絵具でお札のもとになる原図を描く。 彫刻担当者はその原図をもとに、手彫りで原版を作成する。原版は銅板の上に線と点だけで彫られるが、完成までに半年以上かかるという。手先の器用さはもちろん、正確さ、粘り強さ、一つの作業に専心できる能力が求められる。常に質の高い技術を保持するために、普段から名画の複製画を彫るなどの訓練もおこなっている。
何より驚いたのが、身元や名前、容姿などは公にはされていないということだが、その理由を聞いて納得した。
類まれな技術を持つゆえに、偽札絡みの犯罪に巻き込まれかねないために「機密」とされているというのだ。
普段から身辺を奇麗にしておく、人付き合いに気を配る、目立ったことをしない、など生活のなかで普通の人と違う気遣いがたくさんあるのではないかと想像する。それだけでも大変なプレッシャーだ。しかし、それだけに完成したときや自分の作品が世に出回ったときの喜びは大きいのではないかと思った。
このような(失礼ながら)非常にミステリアスな職業の人に出会うと、どうしても職業病が発症して、「ドラマ化したらおもしろいのでは?」とか「ドキュメンタリーで描いたらよさそうだ」などと考えてしまう。
いやいや、それは不謹慎なことだ。

Mさんという仮名になっていた方の言葉が印象的だった。
「自分を出すより、伝統と品位のある作品を出したい。工芸官はアーティスト(芸術家)ではない。アルティザン(職人)なんです」

「お札と切手の博物館」HPより

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