【今日の新聞から】親族間で増幅される「憎悪」
今朝の新聞には、台東区で4歳の次女を殺害した父母と相模市で父母を殺害した息子の記事が並んでいた。
令和2年版(2020年版)警察白書によると、2019年に検挙された殺人事件の「被疑者と被害者の関係」で最も多かったのは「親族」(475件、54.3%)だった。なんと、半分以上だ。次いで多かったのが「知人・友人」で189件、21.6%となっている。
日本の殺人事件は、全体としては減少傾向にある。つまり、殺人事件そのものは減っているのに、親族間の事件は増加しているのだ。これはどういうことを意味するのか?
血族関係にある人物、または他人から親族になった人物、つまり「身近な人」に対してほど強く明確な殺意を持つということだ。その根底には、「他人だったら許せるけれど、家族だったら許せない」という思考回路だ。一見矛盾しているようだが、誰しもが身に覚えがあることではないだろうか。「なんで家族なのにわかってくれないのか!」「親なんだから理解してくれるのは当たり前」という感情がその思いのベースにはある。もはや、「喧嘩するほど仲が良い」は死語だ。
さらに前述の警察白書によると、「親族間」の内訳は「配偶者」が158件の33.3%で最多だった。続いて、「親」131件(27.6%)、「子」107件(22.5%)であることから、「家庭」が事件の舞台となっていることは歴然だ。
今回私はこの中の「子殺し」について述べたい。前述した台東区の父母は、娘に有害な化学物質「エチレングリコール」を飲ませた容疑で逮捕されている。もしそれが本当なら、どんな思いでそんなことを我が子にやったのか、聞いてみたい。「エチレングリコール」は甘さを感じるという。4歳の女の子は「おいしいな」と思って飲んだのか……と想像すると胸が痛い。事実なら、断じて許せない。
子殺しの発生件数は年間数十件だが、表沙汰にならない事件を含めれば300件前後もあるというデータもある。にもかかわらず、日本においては子殺しをした親に科せられる罪はさほど重くない。
ノンフィクション作家の石井光太氏によると、出産直後の新生児を殺害する「嬰児殺し」の場合は、懲役3年前後。2人殺害しても懲役5~6年に過ぎない。虐待でも「揺さぶり死」の場合は、無罪~懲役3年ほどで済んでしまう。驚いたのは、「無理心中」で親が生き残り、子どもだけが死んだ場合には執行猶予で済むことが多いということだ。
今回のような親が3年程度で罪を償ったことになってしまうのは、あまりにも幼い子の気持ちを考えると軽すぎると思うのは私だけだろうか。
「NEWポストセブンHP」https://www.news-postseven.com/archives/20220412_1742187.html?IMAGE=1&PAGE=1-1#goog_rewardedより