川上未映子・著『黄色い家』に隠された「犯罪の裏側」を想像する

最近、川上未映子氏の『黄色い家』を読んだ。一気読みだった。
まず読後の感想は、「なんか、すごいものを読んだ」という気がした。犯罪というものがどのようにして生み出されてゆくのかといった裏側を除いてしまったような気がしたからだ。

この本を読んで、私はある事件を思い出した。

2020年、福岡県篠栗町で起こった母親が当時5歳の息子を餓死させたとされる「福岡・5歳児餓死事件」だ。母親がママ友から精神的支配を受けた犯行として、日本社会に大きな衝撃を与えた。
母親の碇利恵被告(40)は、今年6月に行われた第一審で、保護責任者遺棄致死の罪に問われ、懲役5年の実刑判決を言い渡された。一方、母親を精神的に支配していたとされるママ友・赤堀恵美子被告(49)は「指示していません」と法廷で発言。碇被告とその家族の生活全般を支配し、5歳の男の子を餓死させたなどとする起訴内容を全面的に否定、無罪を主張し、懲役15年とした裁判員裁判の一審福岡地裁判決を控訴したが、福岡高裁は今年3月この被告側の控訴を棄却した。被告側はこの判決に対して上告しなかったため、懲役15年とした福岡高裁判決が確定した。

話を書籍に戻そう。主人公の「わたし」こと花は、生きるために、そして「家族」を作り守るために、犯罪に手を染めてゆく。一見、クライムサスペンスかと思いきや、壮大なるひとりの人間のヒストリーでありヒューマンドラマに仕上がっている。この花が慕う黄美子が赤堀恵美子受刑者に重なった。「指示していません」と赤堀受刑者は述べているが、もしかしたらその発言に嘘はないのかもしれないと思ったからだ。自覚がない。人を操ったり、支持をしたり、そしてそれによって犯罪をさせたりする類の人たちのなかには、こういった種類の人間がいるのではないか。
無意識に人を操る……それは一番恐ろしいことだ。やっている本人には「罪の意識」はないし、やらされている方にも「被害者である意識」はない。
もしかしたら、犯罪とはこういって生み出されてゆくのかもしれない。そんなふうに感じた。

とても深く考えさせられた本だった。

「Amazon」HPより

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