【活動報告】毎日新聞「話題の本」で『ザ・芸能界 首領(ドン)たちの告白』を書評――「悪」と見られる“虚実皮膜の”世界に潜む《覚悟》と《矜持》とは何か?
本日(10月25日)から、毎日新聞「話題の本」欄で、月一回の書評を担当することになった。
初回は、田崎健太『ザ・芸能界 首領(ドン)たちの告白』(講談社)を選書として取り上げた。
本書は、虚実が交錯する芸能界の舞台裏を描きながら、私たちの価値観を問い直す一冊だ。初回にこの本を選んだのは、「芸能」という“鏡”を通して、社会の輪郭を探るためだ。それは、テレビの歴史の半分以上を歩んできた私自身の経験とも重なる。テレビと芸能界は切っても切れない関係にあり、その両者が今まさに「新旧交代」という過渡期を迎えている。芸能界を総括することは、テレビの現在地を見つめ直すことでもある。
書評では、私が会合であるドンと食事したときのエピソードも披露されている。これは、本邦初だ。果たしてその「ドン」とは誰なのか。そういったことも、書評を読んでいただく楽しみになるだろう。
芸能界の“フィクサー”たちに肉薄した、読み応えのある一冊をどのように評したか、詳しくは新聞紙面で読んでいただきたいが、ここでは今回に至る経緯に触れたい。
毎日新聞とは、長いご縁がある。
最初のきっかけは、山崎豊子『二つの祖国』を私がドラマ化したことである。山崎氏の没後10年特集の際に、取材を受けた。言うまでもなく、山崎氏は毎日新聞の記者出身だ。その後も、「論点」で『セクシー田中さん』問題について語ったり、「ジャニーズ事務所性加害」問題や中居正広氏に起因するフジテレビの問題に取材を受けたりと、折々に声をかけていただいている。
学芸部とのつながりは、書評欄のコーナー「なつかしい一冊」への寄稿が始まりだった。私はそのとき、モーリス・ルブランの『奇巌城』を取り上げた。
小学生のころ、私は一日に何冊も本を読むほどの“本の虫”だった。親が月に一冊ずつ渡すつもりで隠していた「怪盗ルパン全集(全30巻)」を見つけ出し、1週間で読破してしまった。あのシリーズは、のちに“秘境”と呼ばれる場所に魅かれ、30年以上にわたってドキュメンタリーを作り続けることになる私の人生に、大きな影響を与えた。
そんな流れの中で、今回もまた声をかけていただいたのだ。
さて、肝心の『ザ・芸能界』の内容である。
この本が、なぜ“今”というタイミングで出版されたのか。
そして、著者・田崎健太が、なぜここまで芸能界の“ドン”たちに迫ることができたのか。
皆が知っている、あるいは知っているつもりでいた芸能界の事件。郷ひろみや能年玲奈の独立騒動、サザンオールスターズ獲得……その裏側に何があったのか。ドンたちの口から語られる証言の数々は、驚きとともに、ある種の納得をもたらす。
「芸能界」と聞くと、どこか黒いイメージを抱く人も多いだろう。だが、ドンたちもまた人間だ。情熱と覚悟を持ち、矜持を胸に時代に“挑んで”いた。
「芸能界=悪」と決めつけてしまう前に、ぜひ本書を読んでみてほしい。
その先に、何が見えてくるか――自身の心で確かめてほしい。
最後にもうひとつ、紙面では書ききれなかった「本書の楽しみ方」。
本書には、世良公則&ツイスト、原田真二、Char、高田みづえ……と、誰もが知る懐かしのスターたちが次々に登場する。彼ら彼女らの名前が出てくるたびに、私はついYouTubeで昔の映像を探して見入ってしまった。これがまた楽しい。秘話の背景に、当時の空気が立ち上ってくる。
ただし、難点がひとつ。読み進まないのだ。
そんな“寄り道”込みの読書も、また一興である。
「Amazon」HPより


