【活動報告】消えゆく“祈り”を映像に――五島列島・奈留島《かくれキリシタン》のクリスマス儀式と「最後のオラショ」

長崎県、五島列島の奈留島に来ている。本学・桜美林大学の学内学術研究のフィールドワークのためだ。テーマは「かくれキリシタン」。2023年に本学に入職してから、3年にわたり研究を続けている。
私は、テレビ局員時代、30年以上の期間、世界の発展途上地域、いわゆる「秘境」と言われる場所で、少数民族の暮らしや文化、習慣や風俗をカメラに収めてきた。もちろん、テレビ番組を作ることが一番の目的だが、私自身が少数民族という「マイノリティ」に興味があったからだ。そして、知らず知らずのうちに、「映像人類学」の手法で学びと研究を深めていた。
テレビ局を卒業して、「かくれキリシタン」の研究を始めたこともそういった人類学的な「マイノリティ」への興味が続いていたからではないかと、今にしてみれば思う。かくれキリシタンは、日本だけに存在する固有の文化だが、常に社会的に弱い立場に置かれたり、差別や偏見を受けやすい“少数派”であったからだ。
2023年度は、このかくれキリシタンの洗礼儀式「お授け」を復元する様子を映像に収めた。
2024年度は、かくれキリシタンの祈りの言葉「オラショ」が絹に書かれた「今日の御志き(おんじき)」を解読し、映像化した。
2025年の今年度は、かくれキリシタンのクリスマスの儀式「お大夜(たいや)」を映像化する。また、人々の記憶の中に消えようとしている「オラショ」をなるべく映像として残しておきたいと考え、「最後のオラショ」を収録する。臨終の際に唱えられる「最後のオラショ」は、信仰の記憶の最終地点とも言える。それを記録することは、祈りの継承であり、文化の証言でもある
今回は、その打ち合わせとロケハン、第一回目の撮影のため奈留島を訪れている。これまで同様に、かくれキリシタンの子孫である柿森和年氏の協力を得てのことだ。
本格的な撮影は、来年2月の予定。この祈りの記録が、皆さんにとっても何かを問い直すきっかけになれば嬉しい。続報もぜひご覧ください。

上:柿森氏が館長を務める「阿古木 浜辺の資料館」
下:奈留島の海

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