【今日の新聞から】テイラー・スウィフト×佐良直美 日米歌手の「あれも人生、これも宿命」
今日は新聞の2つの記事の横断考察をおこなってみたい。
まず、アメリカの歌手・テイラースウィフト氏の記事だ。前回の大統領選でバイデン大統領を支持したスウィフト氏が政権闘争に巻き込まれている。共和党のトランプ前大統領の支持層が、スウィフト氏が交際するトラビス・ケルシー選手のチームが出場するプロフットボールの試合で勝利したことを受けて、民主党が試合を操ったという「陰謀説」を流したというものだ。
日米のお国柄の違いを実感する事件だ。
日本で、いち歌手がこのような攻撃や批判を受けることはない。スウィフト氏は昨年9月にインスタグラムで「選挙に行こう!」と呼びかけ、これによって3万5千人以上が投票に必要な「有権者登録」をおこなった。このことからもわかるように、次回の大統領選に対して大きな影響力を持っている。
昔は何となく、芸術や音楽、アートの世界と政治は切り離すべきという風潮があった。そのため、歌手や俳優が政治的な表明をすることもタブーとされてきた。しかし、アメリカでは、2016年の大統領選直前にロバート・ダウニー・Jrやスカーレット・ヨハンソン、マーク・ラファロ、ジュリアン・ムーアら大物スターが総出演して「選挙に行こう!」というCMを製作、放映したような流れがきっかけになって、いまでは著名人が政治的な表明をするのは常識となっている。
スウィフト氏も有名な「あまり知らなかったから(もっと政治を)わかってから発言したかった」と、これまで黙っていた理由を説明した一件以降、積極的な発言をしている。このスウィフト氏のように「政治のことをわかる努力」をして、わかってから発言するという姿勢はなかなか賢明だと評価していただけに、今回の件は完全に共和党の「陰謀説」だと思わざるを得ない。
アメリカの有名人らは、慈善事業や社会運動にも積極的に関わっている。長年、国連の活動に従事してきたアンジェリーナ・ジョリーを筆頭に、セレブの多くはフェミニズムや銃規制、動物愛護、環境問題など何か決まった自分の関心事をしっかりと持っている。そしてそれについて責任を持って発言している。
日本の著名人やアーティストたちもそうなればいいのにと私は日頃から思っていただけに、今日の佐良直美氏の記事は嬉しかった。
政治や環境問題といった大きなことでなくてもいい。「不幸な動物を減らしたい」という単純な思いから栃木県那須塩原市で犬のしつけ教室を開きながら、動物愛護活動に力を注ぐ佐良氏も立派なものだ。若い世代は知らないだろうが、佐良氏と言えばNHKの『紅白歌合戦』に13回連続出場した名だたる歌手である。「世界は二人のために」や「いいじゃないの幸せならば」などのレコード大賞受賞曲は耳にすればわかるはずだ。
もっと、こういった著名人による慈善事業や社会運動が日本でも広がることを期待する。もちろん、政治活動もしかりである。そのためには、まず私たちの「有名人や著名人は影響力があるのだからそういった公的活動からは距離を置くべき」という先入観と偏見、固定観念をアンラーンすることから始めなければならない。
心無いバッシングで価値ある行動が妨げられては、意味がない。
今日は、新聞の「国際面」と「情報面」という全く違う面の2つの記事から大きな叡智を得た。有意義だった。
UnsplashのRosa Rafaelが撮影した写真