【今日の新聞から】「国語世論調査」の「本を読まない人が6割」という〝扇情的な〟ニュースに隠されたウソ
2023年度の「国語世論調査」が発表になっていた。「一カ月に何冊くらい本を読んでいるか」という問いに対して「読まない」という回答が62.6%と初めて半数を超えて、過去最多になったという記事が目についた。
このニュースを読むと、「活字離れ」という言葉が浮かぶが、本当にそうだろうか?
また、私のような年寄りからすると「読んでないのはほとんど若者層だろう」とうがった見方をしてしまう。「若者層の活字離れ」……これに関してもまったくのまやかしだ。
ニュースは〝扇情的〟な方がおもしろい、〝ヤバい〟内容の方が目を引く。「国語世論調査」の「本を読まない人が6割を超えている」という報道もそういう類かと疑いたくもなる。
出版業の内訳の推移を見ると、週刊誌や月刊誌は、休・廃刊の増加に伴い大幅に下落している一方で、書籍は比較的緩やかな下落しか見られない。 また、出版市場の推移を見ると、「紙出版」は年々縮小傾向にあるものの、「電子出版」が伸びているため、市場規模全体としては世の中で「活字離れ」と言われているほど落ちてはいないことがわかる。(公益社団法人 全国出版協会・出版科学研究所 発表の「出版指標 年報 2023年版」より)
一方で、高校生の平均読書冊数は直近で月1.6冊という報告もある。1970年代以降ずっと月2冊以上超えたことはなく、横ばいだという。「本離れ」とは以前と比べて減ることだから、「本離れした」というのは間違いだ。それに比べて大学生の不読率は上昇し、ふたりにひとりが読まない。しかし、大学への進学率が向上したことによって、従来であれば大学に行かなかった学力層まで進学している。「本を読む習慣がない」層も大学生になっている。多様性の時代にあって、「大学全入時代」の学生の読書率は、大人全体の読書率とさほどの差がないと言っていいだろう。
今回の「国語世論調査」が指す「本」には電子書籍も含まれているが、何よりも注意しなければならないのは、ここにはネット記事などの活字は含まれていないということだ。ネット記事の活字数は意外と多い。皆さんのなかにも、通勤中にスマホなどでニュース記事を読む人も多いだろう。
要は、活字を読む「媒体」が変化しただけのことだ。映像を見る人が減ったのではなく、テレビを見る人が減った、しかし、その反面、配信などのVODの映像を見る人が増えたのと同じ理屈だ。
〝扇情的〟〝刺激的〟なニュースの文言に踊らされてはいけない。
「Yahoo!ニュース」より