【おススメ映画】若松節朗監督『海の沈黙』は「いぶし銀」のような作品~じんわりと沁みてくる静かな感動
敬愛する若松節朗監督からムビチケを送っていただいた。
「ノスタルジーを感じる映画です。奥様とどうぞ!」と一筆認められたお手紙が添えられていた。なんとお気遣いの方だろう。ありがたく夫婦で観てきた。
まずファーストカットに痺れた。海に沈む太陽だ。私はドキュメンタリー制作時代に、世界中の朝日と夕日を撮った。今でも印象に残っているのがパタゴニアのピンク色の夕日だ。そのことを思い出した。話を戻そう。
ファーストカットの夕日を見て、「あれ、これはどこから撮った太陽だろうか」と思った。どう考えても、陸から撮った感じの目線の高さではなかったからだ。そしてこの太陽の映像が、映画の途中でまた出てくるのだが、やはり海のなかから見た太陽だった。「謎かけ」としては、のっけからなかなか洒落ている。
そして感想だが、なかなかの作品だった。さすが若松監督、人生の機微がすべて詰まったような〝いぶし銀のような〟作品だった。ワンカットワンカットが丁寧に撮られていて、考えさせられる絵も多かった。私はどうしても映像が気になってしまうのだが、俯瞰の絵が多用されていてとても効果的だと感じた。
俳優の演技については批評などでも述べられているが、本木雅弘氏の鬼気迫る演技が秀逸だった。私としては、『開運!なんでも鑑定団』の初代司会者である石坂浩二氏が贋作に悩まされるという設定がツボにはまったが(笑)。小泉今日子氏もなかなかいい。アップになる度にドンピシャ世代の私などは「年取ったなぁ~」と思うのだが、「いい年の取り方」をしているので、表情が味わい深いのだ。しかし、小泉氏のアップは多かった。最後の方になると、あのアップが癖になる感じもあり(笑)。ほかにも中井貴一氏、仲村トオル氏などうまい役者陣というだけで、安心して見ていられるため、話しに没入できる。これだけの役者を揃えられるのも、若松監督の人徳だろう。
そして何よりも、倉本聰氏の脚本がいい。語り過ぎず、説明し過ぎず。セリフの行間を、上手い役者の演技で考える余裕があるのが嬉しかった。主人公が東京から去った後にどんな生活をしていたのか、どんな人生を過ごしていたのかはほとんど語られないが、そんな細かいことはどうでもよくなった。そういう物理的なことより、彼が何を思いながら生きてきたかという精神的なことに思いを寄せることができた。これこそ、映画だよなぁと思った。倉本氏が自ら若松監督を指名して、わざわざ若松監督が富良野まで会いに行ってこの企画が決まったというのが、納得の作品だった。
最後に、音楽もよかった。住友て何よりも、倉本聰氏の脚本がいい。語り過ぎず、説明し過ぎず。セリフの行間を、上手い役者の演技で考える余裕があるのが嬉しかった。主人公が東京から去った後にどんな生活をしていたのか、どんな人生を過ごしていたのかはほとんど語られないが、そんな細かいことはどうでもよくなった。そういう物理的なことより、彼が何を思いながら生きてきたかという精神的なことに思いを寄せることができた。これこそ、映画だよなぁと思った。倉本氏が自ら若松監督を指名して、わざわざ若松監督が富良野まで会いに行ってこの企画が決まったというのが、納得の作品だった。最後に一言、住友紀人氏の音楽もよかった。哀愁あるピアノが上手い。ツボを押さえていた。
ぜひ皆さんも、映画館に足を運んでいただきたい。
「映画.com」より