【お知らせ】東京新聞「こちら特報部」の記事「旧ジャニーズの性加害は「終わった問題」なのか 告発番組のプロデューサーが公開講座で指摘した「風化」」にコメントをしました

東京新聞からの取材依頼を受けて、「ジャニーズ性加害問題はこのまま風化してしまうのか」というテーマに関する私のコメントが掲載された。記事はネットでも公開されているが、有料会員しか読めない。申し訳ない。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/371104?rct=tokuhou
このブログを読んでくれている方には、私のコメントの部分だけを抜粋してお伝えしたい。同時に、記事には掲載されていない部分を特別にお知らせする。記事には前後のつながりなどがあるため、すべての文脈が正確には伝わらないかもしれないが、少しでもこの問題への理解の拠りどころにしていただければと思う。

私は、今回の問題の背景にある原因を3つ挙げた
1.事務所のガバナンスの弱さ
2.マスコミの見て見ぬふりや隠蔽・横並び体質

そして、実は意外と見逃されているのが3つ目である。
3.この問題に巻き込まれたファンの存在、だ。
私は、タレントの起用と性加害問題を同一視して一緒に議論してしまっていることで、問題を複雑化させてしまっていることを指摘した。これまでも取材などに応える際に何度も言っているが、所属タレントには罪はない。その事務所がけしからんからといってその事務所のタレントが干されるようなことがあれば、ウクライナに戦争を仕掛けたロシアはけしからんからロシア人を差別するといったような愚行と同じだ。
だが、現実的には「事務所が悪いから、その事務所のタレントを使わない」といったように、タレント起用と性加害問題が同じ土俵で裁かれてしまっている。そのことによって旧ジャニーズ事務所を支えてきたファンの「熱量」の行き場が失われ、冷静になれずに誹謗中傷に走るという現象が生じているのだ。
誹謗中傷は犯罪行為だ。本来、お気に入りのタレントがテレビに出られないなどでストレスを抱える「被害者」であるはずのファンたちは、このままでは「加害者」になりかねない。彼女、彼らを加害者にしてはいけない。
ご存知のように、私自身もXで多くの誹謗中傷やシーライオニングというハラスメント行為を受けて、疲弊した。そのことによって、改めて確信した。
上記の3.のファンという大衆の存在を抜きにして十分な検証がおこなわれなければ、議論は中途半端に終わり、同じような問題がまた起こる可能性がある。そう警鐘を鳴らしたい。
記事化はされなかったが、私がインタビューで力説したことがある。スタートエンターテイメントやスマイルアップは、ファンを加害者や犯罪者にしない取り組みや呼びかけをおこなうべきだ。それが最終的には、所属タレントを守ることにつながると声を大にしたい。

「東京新聞デジタル」より
*「J-POPの捕食者」に関する記事(BBCニュース・ジャパンの公式ホームページよりスクリーンショット)

【お知らせ】東京新聞「こちら特報部」の記事「旧ジャニーズの性加害は「終わった問題」なのか 告発番組のプロデューサーが公開講座で指摘した「風化」」にコメントをしました” に対して4件のコメントがあります。

  1. 匿名希望 より:

    ジャニーズ問題について、批判する大学教員(特にメディア関係学科)の総数が少ないです。
    東京大学大学院 情報学環・学際情報学府等は何をやっているのでしょうか。公共的な仕事をするべきだと思います。

    1. 田淵 俊彦 より:

      コメントありがとうございます。
      仰るように、この問題はメディア研究においてとても重要なものです。
      問題意識を持っていないとしたら問題ですが、発言をすると誹謗中傷をされると恐れているのかもしれませんね。
      ご指摘のなかにあった東大ですが、田中東子先生は積極的に発言、研究されていますね。田淵 拝

  2. 相澤直美 より:

    東京新聞の記事を読みたくて無料会員登録しました。月3本までは読めるようです。
    公開講座が開かれるのを知らず、参加できなかったことを大後悔中です。
    田淵様は参加されたのではなくコメントだけだったのですね。記事以外の部分をお伝えくださりありがとうございました。
    ファンのことをこのような取り上げ方をしてくださったのは、私の知る限りでは記名で発言されている方では田淵様が初めてのように思います。ありがとうございます。
    これもあまりにも酷い攻撃から得たものかとも感じられて、Nスぺ前までとはこの問題への考え取り組み方も違われただろうなと思っています。
    私はずっと旧Jのあるグループのファンです。信じていただけないかもしれませんが、BBCの報道まで過去の告発・報道に触れてきませんでした。理由は個人的な事情があるので述べませんが、ジャニー氏の性児童虐待を知って、自分の中でひっかかっていたことの答え合わせが次々とできてしまいました。知らなかったとはいえ、自分も共犯者であったことの自責の念でいっぱいになりました。それからいっぱい知らなかった事知ろうとしなかった事を知る努力をしてきました。いろいろな立場のファンの声も見にいったりもしました。タレントを救いたいのはファン誰しも同じなのに、こうするべきという方法が根本的に違っているために、傷つけあってしまう。そして浮かんでこないけれど、大多数は自分の意思表示はせずに、タレントに「ついていく」か去るかしているのが実情です。この「ついていく」を作り出しているのが、タレントの、そしてファンの背景にある「意識・認知・体験」の問題だと考えています。それをさらに複雑にしているのは私も抱えてきた問題が大きな一因と、先日田淵様のある著書を読み確信しています。
    そして、その上で、タレントには罪はないけれど、年長者には社会的責任はあると考えています。そしてその責任を果たさない限り、彼らも救われないのだと思っております。
    長文失礼いたしました。

    1. 田淵 俊彦 より:

      相澤直美様
      コメントありがとうございます。
      私はずっと前から取材を受けるたびに、「在事務所のタレントには罪はない。もしかしたら、彼らも被害者かもしれない」と言い続けてきました。そして性加害の問題と旧ジャニーズのタレントがテレビに出る出ないということは別次元の問題で混同してはいけないとも主張してきました。しかし、なぜかそのコメントは新聞や雑誌の記事では掲載されることはありません。それはきっと忖度が働いているのでしょう。タレントも事務所と一緒に罰を受けろ的な思考ですね。よくないです。「タレントには罪はないけれど、年長者には社会的責任はあると考えています。そしてその責任を果たさない限り、彼らも救われないのだと思っております」は仰る通りです。彼らをいばらの道に追い込んだのは大人ですから。田淵 拝

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