【今日のタブチ】大河ドラマが夏のロケは「原則なし」とする英断~NHK以外の現場ではなかなか実現できない現実

気候変動などで熱中症リスクが年々高まっている。国は事業所などに対策強化を求めるなど、危機意識が広がるなか、NHKの大河ドラマが夏のロケを「原則なし」とすることを決めたというニュースがあった。
これは来年放送予定の『豊臣兄弟!』でのことだが、大河ドラマというとダイナミックな屋外での撮影がつきもので、こういったシチュエーションでのチャンバラシーンを楽しみにしている人も多いだろう。
この措置の背景には、2つの事柄が起因していると私は見ている。
1.〝対政府〟的なNHKの配慮・・・前述したように、国を挙げての熱中対策強化をおこなうなか、国営放送ではないが、NHKとしては何らかの対策を講じているとアピールする必要がある。しかも、大河ドラマは目立つ。そのドラマで酷暑のなか堂々と屋外ロケをしているとなると、コンプライアンスだけでなくレピュテーションリスクも懸念されるだろう。
2.技術の向上・・・LEDの画面を組み合わせた「LEDウォール」に風景などのCGを映して、それを背景に役者が演じる「バーチャルプロダクション」の技術が進歩している。現在放送中の『べらぼう』もこの技術を使って撮影している。
もちろん、熱中症からスタッフを守ることは大切だ。しかし、現実的にはなかなか今回のNHKのような思い切った施策をおこなうのは、まだ民放各局や制作プロダクションにとっては難しい。大河ドラマは桁違いの制作予算がある。それと同じ英断は、したくてもできない。それはひとえに「制作費の限界」という問題があるからである。NHKの大河ドラマは「局制作」であり、予算も局が握っている。「この部分に予算をかけよう」や「ここにはお金をかけられる」という判断ができる。しかし、制作プロダクションが局から予算配分をされて制作する場合には、好きなように予算を使えるわけではない。ケースバイケースで、そういった事情も変わってくるのである。
今後、局側の制作現場への理解が深まっていけば、現場の環境や働き方も変わってくる。それを期待したい。

「中日新聞WEB」より

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