【おススメドラマ】日テレ『なんで私が神説教』はパワハラ・アカハラ時代に必見のドラマだ~「教員のセオリー」をすべて外したキャラから読み取る「風刺の精神」
広瀬アリス氏が主演を務める日本テレビ系土曜ドラマ『なんで私が神説教』を見た。
このドラマは、無職生活を脱却するために周りから無理強いされなんとなく高校教師になった、広瀬氏演じる主人公・麗美静(名字は「うるみ」と呼ぶ。このあたりもしっかりと本編中で「自虐ギャグ」として使われる)が、問題児揃いのクラスを担当し、さまざまな事件に巻き込まれるが、したくもない「説教」をしなければならない状況に追い込まれ、悪戦苦闘するさまを描くものだ。
ジャンル分けとしては難しい……学園モノ? エンタメ? コメディ? どれでもないんだよなぁ……。でも、スカッとすることは間違いない。
正直言って、最初は期待していなかった。ユルい感じの学園モノかなと思っていたからだ。私はクールの最初にはほとんどのドラマを見るようにしている。しかし、初回を見て2回目からはやめてしまうのがほとんどだ。クールが終わるころには〝精査されて〟、2~3本しか残っていない。「学園モノ」と言えば、前クールにTBS系で放送の「御上先生」があった。このドラマは最終回まで視聴したが、(あくまでも〝私の〟)評価としてはそんなに高くない。
だから、今回もそんなに期待していなかった。
だが、番組の中盤くらいから目が離せなくなった。
正直、このドラマの主人公・静は、(大学ではあるが)教員の私からすると、「教員としてのセオリー」をすべて外している。〝危なっかしくて〟仕方がない。しかし、それがおもしろく、痛快なのだ。何より、広瀬氏がいい。「脱力した感じ」や「やる気ない感じ」がうまい。
「黙れ、ガキ」と生徒に怒鳴ってみたり、生徒を論破したりと、教育者として〝あるまじき〟行為を連発する。絶対に、現実には〝あり得ない〟〝できない〟からこそ、スカッとするのだ。芸人出身のオークラ氏の脚本もうまい。
この『なんで私が神説教』は、TBS系で放送され、韓国ではリメイク版が制作予定、次回はスペシャルドラマとしても復活することが決定している『不適切にもほどがある!』を彷彿とさせる共通点がいくつかあることを指摘したい。
1.主人公が相手に忖度しない
2.コンプラやハラスメントに過敏な社会風潮に批判的である
まず、1.の「主人公が相手に迎合しない」だが、「黙れ、ガキ」しかり、「イジリとイジメは一緒なんだよ!」など、相手に「忖度」や「迎合」することはない。その「潔さ」に視聴者は溜飲が下がる思いになり、拍手喝さいするのだ。そして2.の「コンプラやハラスメントに過敏な社会風潮に批判的である」は、パワハラやアカハラ(アカデミー・ハラスメント:教育上のハラスメント)を恐れて生徒と向き合おうとしない世の教師たちを揶揄しているということである。主人公・静はもちろん、真反対のことをやる。いわゆる、「風刺の精神」が込められているという点がこの作品が「優れている」と感じる理由だ。
ドラマのなかで、木村佳乃氏演じる校長が話す言葉が象徴的だった。
「ちゃんと大人が、『ここが間違っている』と叱ってあげなければ、だめでしょう」
全くその通りだと思った。
ご覧になっていない方は、放送後1週間はTVerで見られるので、ご覧になってみてはいかがだろうか。私は〝痛快〟かつ〝想定外の〟主人公・静の行動を今後も楽しみにしたい。
「日本テレビ公式HP」より