【今日のタブチ】さいたま高1女子生徒殺害事件~容疑者の「虐待で性格がゆがんだ」という言葉の意味を深く考えるべき理由
さいたま市桜区のマンションで住人の高校1年生の虚子生徒が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された男性が容疑を認めている。男性と女子生徒との関係はまったくなく、容疑者は「殺害する対象の女性を探していた」と語っているように、「無差別殺人」の様相を呈している。
私は容疑者が語るある言葉が気になった。
「虐待を受けて性格がゆがんだ」
もちろん、もし彼が犯人だとすればその罪は免れることはない。だが、彼が述べることが真実だとすれば「虐待」というものがどれだけ犯罪に結びつくのかということを、私たちは考えるべきだ。
虐待を受けた人物は、自己認識や他者との関係において「認知のゆがみ」を抱えることがある。例えば、自己評価の低下や過度な警戒心、対人関係の困難などが挙げられる。研究によると、虐待を受けた子どもは、敵意や悪意を過剰に認識する「被害的認知」を持ちやすく、それが対人関係や社会適応に影響を及ぼすことがある。
今回の容疑者の言葉「自分は社会の底辺にいる」という過剰な自己否定や自己肯定感の低下も特徴の一つだ。性的虐待を受けた子どもは、「自分は悪い存在」と思うようになってしまう。
また、虐待は「連鎖」する。「世代間連鎖」と言われるものだが、世代を超えて引き継がれ、虐待を受けた親が自身の子どもに対して同様の虐待を繰り返す事例も報告されている。
もちろん、「虐待」を受けた子どもが皆、「犯罪」を起こすわけではない。だが、「虐待」と「犯罪」は密接に結びついているということを私たちは認識するべきだろう。
「朝日新聞オンライン」より