【おススメ動画】Netflix『ラ・パルマ』はよい意味で〝容赦のない〟作品~自然の「声」が聴き取れるかどうかが人類の生き残る道だ
Netflixでリミテッドシリーズの『ラ・パルマ』を見た。一見、「ディザスター(災害)作品」というジャンルかと思ったが、そうではなかった。「ディザスター作品」とは、地震、津波、火山噴火、竜巻、洪水などの自然災害が描かるものだが、どちらかというと、自然災害は「インサイティングインシデント(きっかけ)」に過ぎない。この作品の主軸は、自然災害に立ち向かう姿が中心となるヒューマンドラマだ。
北大西洋のスペイン領カナリア諸島のひとつに実在するラ・パルマ島が物語の舞台となっている。この島で休暇を楽しんでいたノルウェー人の一家がフューチャーされている。若い研究者が差し迫った火山噴火の兆候に気づいたことがきっかけで、家族がとてつもない災害の危機に直面してゆくさまを描いている。
一言で言えば、〝容赦のない〟作品だった。その容赦のなさに引き込まれた。
実話ベースの作品かと思わんばかりのリアリティだったが、そうではない。しかし、驚かされたのは過去の同じ島に同じような自然災害が起こっているという事実だ。この島は火山活動が活発な地域であり、クンブレ・ビエハ火山の噴火が歴史的に繰り返されている。1585年、1646年、1712年、1949年、1971年、そして最近では2021年に大規模な噴火が発生している。その際には溶岩流が広範囲に広がり、約1300棟以上の家屋が破壊された。2016年と2023年には大規模な山火事が発生し、数千人が避難を余儀なくされた。そのような「自然災害の島」とも言える実在の島を舞台に、「よくもここまで〝妥協知らず〟の作品を作れたものだ」とクリエイター陣の「覚悟」に感服した。テレビドラマであれば、風評被害や当局からのクレームを気にして島の名前は変えることが多いだろう。
物語はともすれば「ご都合主義」の展開も垣間見られる。その点は「唯一の欠点」として指摘しておきたいが、総体的に〝クオリティの高い〟映像作品だと太鼓判を押したい。
最初に述べたように、この作品はヒューマンドラマだ。ネタバレになるので詳しくは書かないが、火山の映像は圧巻だ。だが、それ以上にそのことによって〝右往左往させられる〟人間のこころの動きが繊細かつ綿密に描きこまれているのがこの作品の優れた点だ。家族のなかには、発達障害を抱えていると思われる男の子がいたり、長女は自分が「レズビアン」であることを悩んでいたりと、現代風のテーマもしっかりと盛り込まれている点も評価したい。
私がこの作品を経て強く実感したのは、以下の2点である。
1.運命というのは本当にわからないものだ
2.自然の「声」は聴くべきだ
運命というのは「どうせわからない」。だから、いまを「悔いなく生きたほうがいい」。また、自然の「声」(今回で言えば、噴火の予兆)をどう聞き取れるのかということが、これからますます加速化する自然災害を防ぐ大事な要件である。そういった教訓を得た。
1本あたり40分から50分ほどの4話構成なので、視聴しやすい。ぜひご覧になってみてほしい。
「Netflix公式HP」より