【今日のタブチ】「サイバー制御法」が成立~収集された情報が市民監視に使われる~戦前の軍国主義の「前触れ」と危惧することは本当に「杞憂」なのか?
重要インフラへのサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」導入関連法、いわゆる「サイバー制御法」が昨日16日、衆議院本会議で採決され、成立した。
この法案に関しては動向を注視してきたが、議論が成熟していないことから「時期尚早」と感じている。もちろん、重要インフラへのサイバー攻撃が近年増加していて、そのことへの対策が急務であることは充分に理解している。しかし、少し「強引」に思ってしまうのは私だけではないだろう。野党がこの法案に関して政府の恣意的な運用の恐れを指摘したことに対して、衆院では条文に「政府が通信の秘密を尊重する」という規定を追加したが、これは「強制力」があるものではなくあくまでも政府の自主的な運用に委ねたもので、実態が乏しいからだ。
これでは、「最新の防犯システムを無人島に設置するようなもの」や「高級ワインを水で割る行為」と揶揄されても仕方がない。技術や制度があっても、適切に活用されないかもしれないからだ。
「杞憂だ」と言われればそれまでだが、私は正直、今回の「サイバー制御法」成立は戦前の軍国主義への前触れであると危惧している。サイバー空間における国家主権の強化が、軍事的な統制の拡大につながる可能性があるからだ。その具体的な理由は、以下の4つである。
1.先制攻撃の可能性
法案では、重大なサイバー攻撃の恐れがある場合に、攻撃元のサーバーに侵入し「無害化」する措置が含まれている。これは、攻撃が実際に発生する前に対処するという考え方であり、戦前の日本が採用した先制攻撃の戦略と類似していると専門家から指摘されている。
2.国家による監視の強化
法案には、通信情報の監視や官民連携の強化が含まれており、政府が広範な情報を収集・分析できる仕組みが整えられることになる。これによって国民のプライバシーが侵害される可能性があり、そうなれば戦前の国家統制と同様である。
3.軍事的統制の拡大
法案では「高度で組織的かつ計画的な行為」には自衛隊が対処することと定められており、そのような場合には自衛隊がサイバー攻撃に対処する権限を持つことになり、警察と共同で「侵入・無害化」措置を実施できるようになる。これは、軍事的な権限が拡大し、戦前の軍国主義的な体制に近づくのではないかという懸念につながる。
4.憲法との関係
憲法9条(戦争の放棄)や憲法21条(通信の秘密)との関係が問題視される。戦前の日本では、国家が情報を統制し、国民の自由を制限する動きがあったように、特に「通信の秘密」の侵害につながる可能性が指摘されている。
監視社会・・・しかも、それが軍事的な権限のもとでおこなわれる・・・考えただけでも恐ろしい。
「TBS NEWS DIG」より