【今日のタブチ】ツシマヤマネコからPFASが検出~この「不穏な予兆」は何を意味するのか?~私たち人類への「静かなる警鐘」
国の天然記念物であり絶滅危惧種でもあるツシマヤマネコから、発がん性などが懸念される有機フッ素化合物(PFAS)が高濃度で検出されたという報告があった。調査対象は、2022~2025年に交通事故などで死亡した21匹の個体である。
これはまさに「静かなる警鐘」とも言える出来事だ。
ツシマヤマネコのような生態系の頂点に近い野生動物からの検出は、食物連鎖全体への汚染拡大を示唆している。また、他の野生動物や人間への影響も懸念され、全国的な調査と汚染源の特定が急務とされている。
この出来事で、私の頭のなかには2つの疑問が生じた。
ひとつはどこからPFASが体内に入ったのか? もうひとつは、人間への影響はないのか?ということだ。
まずひとつ目についての検証だ。現時点では汚染源の特定には至っていないが、以下の3つの可能性が指摘されている。
1.食物連鎖による蓄積:PFASは水や土壌に残留し、魚や小動物に蓄積 → ヤマネコがそれらを捕食。
2.水源汚染:対馬島内の河川や地下水にPFASが含まれていた可能性がある。
そして最も恐ろしいのが、3つ目の可能性だ。
3.人間活動由来の流出:米軍基地や原爆の影響があるのではないかという懸念だ。米軍基地や自衛隊基地で使用されていたPFAS含有の泡消火剤が流出した事例が全国で報告されている。また、PFASを含む廃棄物が不適切に処理された可能性も否めない。PFASは原爆製造過程でも使用されていた歴史があり、米軍基地や旧軍事施設との関連性も一部で疑われている。
そしてふたつ目の、人間への影響である。
結論から言えば、ツシマヤマネコから人間への感染リスクは限定的だが、ゼロではない。ヤマネコ自身が直接人に感染させるわけではなく、マダニを介した間接的なリスクが存在するからだ。特に対馬ではマダニの密度が高く、シカの増加がマダニの繁殖を助長していることが判明している。
世界を見渡せば、PFAS規制の潮流は明らかだ。トランプ米大統領による揺り戻しが懸念されるとはいえ、アメリカは事実上のゼロを目指し、EUは個別の物質ではなく、グループとしてPFASを規制するかどうかを検討し、産業界からの反発を受けながらも2026年にも結論を出すとしている。
一方、日本は先進国でもかなり緩い規制を維持し、PFAS汚染対策の「ガラパゴス化」が進んでいる。このままでは次世代に汚染を押し付けることになる。
ツシマヤマネコの「静かなる警鐘」に耳を傾けなければならない。
「yahoo!ニュース」より