【おススメ書籍】金子勝著『フェイクファシズム』が暗示する、日本が辿る「経済崩壊」という戦慄のシナリオ
緊急発売された金子勝氏の新刊『フェイクファシズム 飲み込まれてゆく日本』(日刊現代刊)を読んだ。タイトルからして挑発的だが、その中身はさらに苛烈で、今の日本と世界が直面する「カタストロフ」を見据えた警鐘の書である。
経済学者としての金子氏の分析は冴えわたり、冒頭から「ルールと秩序の破壊王」トランプの暴政が世界を覆っていると断言する。GAFAMによる支配、力による圧政、そして戦争と混乱の連鎖。それはもはや遠い国の話ではなく、日本にも確実に忍び寄っている。
本書は、アベノミクスの後遺症による経済衰退が民主主義の崩壊と結びついていると指摘する。私たちは今、負け続けているのに戦をしている状態にある——この言葉が胸に刺さった。第二次世界大戦の末期、日本が敗北を悟りながらも「戦争をやめよう」と言い出せなかった空気。それこそが、ファシズムの正体なのだと、金子氏は喝破する。
さらに本書は、経済だけでなく環境問題にもフェイクファシズムが忍び寄っていると警告する。日本の再生可能エネルギー開発が停滞している背景には、電力会社による寡占と「原発ムラ」の構造がある。この指摘には、私自身も深く頷かざるを得なかった。
印象的だったのは、引用されていたヒトラーの言葉だ。
「フィルムを含めたあらゆる像が、疑いもなくもっと大きな効果を持つのである」。
文章よりも映像が人々の心を動かす。SNSのショート動画が新たなフェイクファシズムの温床となっている今、映像に携わる者として、これは見過ごせない問題だ。
金子氏は、トランプの巧妙なSNS利用にも言及する。ヒトラーが語ったように、映像を駆使して世論を操る手法は、まさに新時代のファシズムの姿であり、その虚像に満ちた「フェイク」が社会を蝕んでいる。
この本は、単なる批判書ではない。
私たちがこの「カタストロフ」にどう立ち向かうべきか、そのヒントを与えてくれる啓蒙書でもある。「フェイクファシズムはなぜ社会に浸透してゆくのか」——この問いに、私たちは真剣に向き合わなければならない。
映像の力を信じる者として、私たちは何を伝えるべきなのか——今後も、フェイクに抗う表現の可能性について考えてゆきたい。
「ヨドバシ.com」HPより