【今日のタブチ】香港高層火災が警告する、日本《タワマン・バブル》の末路

香港・新界地区の大埔で発生した高層住宅群の大規模火災は、最新情報で死者94人、負傷者76人が確認されている。火災は「おおむね鎮圧状態」だが、安否不明者は依然として60人以上とされ、犠牲者がさらに増える可能性がある。心が痛む。 今回の火災は、都市型高層住宅の安全神話を根底から揺さぶっている――いや、これは決して他国の話ではない。日本の住宅事情、そして私たちの暮らしに深く関わる問題だ
この火災は香港返還後最悪、香港史上最悪のビル火災だ。現場は30階超の高層住宅8棟からなる公営団地で、約2000戸、住民は約4000人。7棟が炎上した理由は、建物同士が近接していたことに加え、外壁補修工事中の竹製足場と可燃性ネットが延焼を加速したことだと指摘されている。香港警察は工事会社の幹部3人を過失致死容疑で逮捕した。
なぜ、これほどの惨事が起きたのか――その背景を掘り下げると、日本の未来が見えてくる。独自の分析をもとに、その危うさを指摘したい。

高層住宅には構造的な危険がある。強風による「煙突効果」で炎が急速に広がる。東京消防庁のデータでは、11階以上の住戸で年間40~60件の火災が発生し、原因のトップはガステーブル、次いでたばこだ。スプリンクラーや防火設備の義務化により延焼は抑えられているものの、避難に時間がかかる構造的課題は残る。
香港の現場でも、廊下や階段が煙で満ち、住民が部屋に戻るしかなかったという証言がある。あなたは50階で火災が起きたとき、煙に包まれた階段を降り切れるだろうか。エレベーターは止まり、非常階段は暗く、熱気と煙が充満する中で――本当に安全だと思えるのか?
さらに、住民層の問題もある。香港では住民の約37%が65歳以上の高齢者だった。日本でも同様のリスクがある。消防庁統計によると、住宅火災の死者の約74%は65歳以上で、逃げ遅れが主因とされる。高層階では非常用エレベーターや特別避難階段が設置されているが、現実には階段での避難が原則であり、体力的に困難な高齢者は避難を諦めるケースも報告されている。こうした状況は、タワーマンションの安全神話に一石を投じている。国土交通省の調査では、マンション世帯主の25.9%が70歳以上、築40年以上では55.9%に達する。タワマンは「終の棲家」として人気だが、災害時の現実を考えたことがあるだろうか。
ここで思い当たるのは、日本のタワマン人気だ。武蔵小杉などのタワマンは売り出されれば10倍以上の競争率。東京23区の新築タワマン平均価格は2004年の約5300万円から2023年には1億1764万円へと倍増し、1㎡単価は約2.5倍に上昇した。海外投資家も参入し、老後をタワマンで過ごそうという人も増えている。私の知り合いも、一戸建てを売ってタワマンに移り住んだ。
資産価値だけを見て「安全・快適」と思い込んでいないか。香港の惨事は、私たちに問いかけている。高層住宅の構造的リスク、住民の高齢化、避難困難性――それらを無視したまま、日本の《タワマン・バブル》は膨らみ続けている。
香港の炎は、未来の日本を映す鏡かもしれない。

「ロイターHP」より

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