考えを止めないー本当の発想力を伸ばすための訓練法「新聞疑問法」
先行き不透明な時代、混沌の時代、そんな時代において突然訪れるリスクを回避するためには「発想力」が必要である。しかし、その発想力を手に入れるためには、理論や理屈だけでは太刀打ちできない。以下に、私が大学で学生たちにレクチャーしている実践法を紹介しよう。
ポイントは「考えを止めないこと」だ。テレビや新聞などのメディア情報をそのまま受け取るだけではその「見えている部分」の後ろに潜んでいる真実は見抜けない。
「考えを止めない」クセをつけるために、私自身が日常的に実践しているのは私が開発した「新聞疑問法」という訓練法である。
これはすこぶる簡単で、朝読んだ新聞の中から気になるネタを一つだけ選んで「記事に書かれていない部分を想像してみる」というものだ。この時点では、データを調べて確認してみるという作業までは必要としない。気軽な気持ちで取り組んでほしい。大事なのは、事例を見た瞬間に想像して、もう一つ先まで考えてみるということ。これは、自分が1次情報を見て、第三者に2次情報を提供するためにどんな付加価値をつけたらいいかということを考えるトレーニングにもなる。
具体例を挙げる。
☆ペットにマイクロチップをつけるのを、義務化☛このペットは、痛くないのかな?
☆高松市が、廃棄うどんを、発電に活用☛エネルギーを確保するために、廃棄が増えたりしないのかな?
☆3つ以上の生活習慣を改善する場合、80歳から始めても、寿命が延びる☛70歳からだと、延びる率が上がるのかな?
☆盲導犬が減少を続け、ピーク時の約8割に減っている☛必要なくなった盲導犬は、どうなるんだろう?
☆食料の価格が1%上がると、1000万人が貧困に陥る☛では、1%下がると何人が助かるんだろう? どうしてそういうポジティヴ面は報道されないんだろう?
どうだろうか?
「新聞疑問法」と聞くと、堅苦しいお勉強チックなイメージを受けるかもしれないが、そうでもない。どれも身近な例ばかりだ。
そして、以上の手法で私のこのコラム「昨日のタブチ、今日のタブチ」が構成されていることにお気づきになったと思う。いずれもその記事に書かれていない部分を推測したものや記事の内容に疑問をいだいているものであるが、疑うことは、否定することではない。
常に「本当にそうなのか?」「ここに書いてあることには、裏の面があるんじゃないだろうか?」「取材されていないみたいだけど、この先はどうなるのか?」という問題意識を持つことは、新しい発想や発見、新しい気づきのためにとても大切なことなのだ。