【今日の新聞から】「ソニー×日立」社員の副業 相互受け入れ

ソニーグループと日立製作所が社員の副業を相互に受け入れる実証実験を始めた。副業の相互受け入れは、すでにキリングループや小田急電鉄なども試験的に実施している。社員に多様な経験を積ませ、成長を後押しする。会社側は他社の進んだ知見を持つ人材を活用し、新規事業創出やイノベーションにつなげる狙いがある。
もう、「情報漏洩」と言っている時代ではないのだ。「企業スパイ」という言葉も、そのうち死語になるのだろうか。
私はこの記事を読んで、まさに私が自著『混沌時代の新・テレビ論』で提唱している、「テレビ局間の還流」と同じだと思った。以下に、抜粋してみる。

「人材の流出」は大きなメリットを生み出す
 前節に記したように、テレビ業界全体のためにはテレビ局は自分の会社のことだけを考えていてはダメだ。あらゆる問題や課題に対してテレビ業界全体としてどうしてゆくべきか、どうしてゆけるのかを考える必要がある。そしてそういった広い視野で考えると、「人材の流出」は悪い側面だけでもないのだ。流出があるということは流入もある。若い世代が生まれるというのもそうだろうし、ほかのジャンルやテレビ局間、他メディアやほかの映像業界からの流入もあるだろう。
 私が在籍していたテレビ東京のドラマ室には、2023年8月段階で18人のプロデューサーと13人のアシスタント・プロデューサーがいるが(ひとりは両方を兼務)、ディレクター監督はいない。これはテレビ東京の社員数が在京民放他局の6割くらいだという特性に起因しているが、注目すべきは「正社員とそうでない割合」そして「正社員のうち中途入社が占める割合」の2点である。
 前者は「どれだけ労力を外部に頼っているか」、後者は「どれだけ能力が流入しているか」というバロメーターとなる。実際の数字を見てみると、「正社員とそうでない割合」は「17:13」。そして「正社員のうち中途入社の社員が占める割合」は「41 %」であり、テレビ東京がいかに外部の労力に頼り、人材の流入が多いかがわかる。この結果はテレ東のドラマ現場に社員の若手を育成する文化がなかったことを暗示しているが、現在の社会環境を鑑みると比較的健全な人材の動き方(流入出)をしていると私は分析している。
 テレビ局自体はこれらの現状をしっかりと見すえて、外部労力の重要性を再認識すべきである。局の「中↔外」というふうにわけ隔てすることなく、外の人間も大切にしなければならない。いわゆる「人材のインバウンド」だ。インバウンド人材の能力をいかに活用することができるかが、テレビ局の今後の生き残りのポイントである。
 私はテレビ東京制作(略称:プロテックス)という制作会社に長い間出向していた。そのいきさつは、拙著『弱者の勝利学 不利な条件を強みに変える〝テレ東流〟逆転発想の秘密』(方丈社刊)に詳しいが、テレビ局の社員でありながら制作会社の社員でもあったので他局で多くの番組を作る機会に恵まれた。日テレの『モクスぺ』や『NNNドキュメント』、フジの『ザ・ノンフィクション』、NHKの『BSプレミアム』、WOWOWの『ノンフィクションW』などである。
 あるとき、テレ東の幹部に言われたことがある。
「局員が他局の番組作りに労力を費やすのは、会社の損失だ」
 確かにマンパワー的な利益を考えるとそうかもしれない。しかし、自局の番組だけをやっていたら制作費を使うだけだが、他局の番組をやることで制作費を外から稼いできているわけだから、経営的には社益を上げていると言えるのではないだろうか。さらに言えば、「社益」とはお金などの目に見える会社の利益だけを指すものではない。社員が外で武者修行をして力をつけてくることも、会社にとっては大きな利益になるはずだ。
 そう考えると、人材の流出はよいことなのではないだろうか。
 テレビ業界の活性化やもっと広いマーケットである映像業界全体を成長させ、発展させることになる。もうすでに「一局だけ」のレベルでものごとをとらえる時代ではないし、いまのテレビの状況を考えればそんなことを言っている場合でもない。
 私はテレビ局の人材もプロサッカーのように「レンタル移籍制」を採り入れればいいのではないかと思っている。そのときどきで本人の希望や会社の必要に応じて局員同士を移籍させたり交換したりすれば、その人の「得意ジャンル」をいま以上に活かせるかもしれないし、会社にとっても足りない人材を補うことができる。「フジのバラエティが得意な30代のディレクター」と「テレ東の経済報道が得意な40代のプロデューサー」を半年間トレードするなどである。そのことで、クリエイターたちの可能性や夢も広がるだろう。
 フリーエージェント制度やフリー契約のようにしておけば、自分の「ホームグラウンド」として元のテレビ局がありながら出たり入ったりすることができる。昔辞めた人がまた活躍できるようなシステムがあって、いま以上にその局やテレビ業界が魅力的になっていけば、優秀なクリエイターや代えがたい人材は戻ってきてくれる。
 さらに大きな力をつけて帰ってきてくれるに違いない。とても夢がある話ではないだろうか。

「テレ東BIZ」より

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