【今日の新聞から】新紙幣発行に疑問を感じなかった〝鈍感な〟私

今朝の新聞には、新紙幣発行に伴って飲食店などの個人経営の事業者から「負担が大きすぎる」と悲鳴が上がっているという記事があった。すでに円安などで材料費が高騰するなかでの追い打ちとなるため、さらに厳しいという。

そうか……そういう視点では観ていなかったと、〝鈍感な〟自分を反省する。
私は昨年2023年3月にテレビ業界から転職したが、その直前の2月に最後のテレビ・ドキュメンタリーを制作した。その番組はNHKで放送された。関連会社・テレビ東京制作(プロテックス)と兼務という立場で企画を成立させた。タイトルはもうひとりの渋沢 栄一の孫・敬三が挑んだ改革という。
昭和の時代に日銀総裁や大蔵大臣、有名企業の社長などを務め、日本の様々な経済改革に人生を捧げた、渋沢栄一の孫「渋沢敬三」にスポットライトをあてたドキュメンタリーだ。大河ドラマ『青天を衝け』から始まって新しい一万円紙幣の顔となることが話題となっていたときだったので、もちろん、そのブームに乗っかろうという意図もあった。
だから、番組内においても、スタジオで俳優の吉沢亮氏が巨大な新一万円札の渋沢栄一の顔の前でナビゲーターを務めるなど、新紙幣を歓迎するムードしか表現しなかった。ゆかりの地、深谷では街づくりに生かそうと官民が工夫を凝らし、経済効果も上っているという紹介もした。しかし、いい面だけではないのだということを今日の新聞で改めて感じだ。

新札に変わる理由としては、よく「偽造防止対策の強化のため」という理由が挙げられる。財務省によると、万が一偽造されたお金が広く出回ると、お金の信用性が低くなったり、被害を受けてしまう人が出る可能性があるとされている。改刷はそれを防ぐためにおこなうのだという。今回は2004年以来20年ぶりの改刷実施だ。事実、従来から使用されている偽造防止技術に加え、高精細すき入れや3Dホログラムといった技術が新たに採用されている。
だが、町場の店主からは「偽札の事件は、ほとんど聞かない。そんなに差し迫っているのだろうか」という声も上がっている。生きてゆくためには、まずは目の前のことから始めないとということだろう。〝新しい〟紙幣ということでの高揚感から歓迎ムードになってはいるが、そういった「光」の裏側にある「陰」、ものごとの両面を観ることの大切さを改めて考えさせられた。

左が渋沢栄一氏、右が孫の渋沢敬三氏
「NHKオンデマンド」より

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です