【今日の新聞から】発達障害の子どもを持つ親の「覚悟」

今日の新聞のコラムには、まったく異なる面の2か所に「発達障害」に関する記事があった。それほど、この話題に関する社会の関心が高くなってきていると感じた。
私が『発達障害と少年犯罪』という自著を上梓していることは、このHPでも紹介させてもらっている。この書籍を出版したときにもっとも多かった声は、「発達障害と少年犯罪を一緒にするなんて不謹慎だ」というものだった。しかし、この声はだいたい周辺の方々から寄せられるものが多かった。実際に発達障害を抱える本人の方やそのご家族は、ちゃんと拙著を読んでくれるので、この本がそんな趣旨ではないことはちゃんと理解してくれる。
つい先日もこの書籍を読んだ方から丁寧な手紙をもらった。「田淵様にお礼を申し上げたく、この手紙を書くことにしました」という文章から始まるその手紙には、自分は将来、少年犯罪の更生に関わる仕事をしたいと思っていて、その勉強のためにこの本を読んだことや、この本を読んで自分と罪を犯してしまった少年たちとの間に似た点があることに気づいたことでとても「救われた」こと、自分にも虐待の経験があることが真摯に綴られていた。そして手紙の最後は、この本が自分に大きな発見と共感を与えてくれたことに感謝しているという言葉で括られていた。私は不覚にも、この手紙を読みながら涙を禁じえなかった。この方の幸せな人生を祈らずにはいられなかった。
そんな思いを、記事を書いた記者もしたのだろう。東京新聞経営企画室東京秘書部長の金杉貴雄氏の記名記事には、読者との交流イベント「読者のミカタ」のことが書かれていた。最年少の参加者である小学6年生のM君は発達障害で、音読が難しい。その克服のため、昨年9月から毎朝5時に起きてコラム「筆洗」を声に出して読み、感想を書いているという。M君は「地球からはみ出してしまっている不完全な人間ですが、困っている人の助けになるため心理士を目指しています」と語っているという。金杉氏はそんなM君を思わず抱きしめたくなったと書いているが、その気持ちは痛いほどわかる。
私に手紙をくれた方もそうだ。罪を犯してしまった子どもたちと似た点がある自分だからこそ、少年犯罪の更生に関わる仕事がしたいと言う。素晴らしいことだ。

もう一つの記事は、元テレビ東京アナウンサーの赤平大氏が家族のことを話しているコラムだ。赤平氏の息子も発達障害だ。だが、進学校である麻布中学校に通っている。もちろん、進学校に通っているからすごいわけではなく、学習障害(LD)を並症することもあると言われる発達障害においても、こういった例もあるということだ。それには赤平氏の親としての「覚悟」と「姿勢」の影響が大きいと感じた。
発達障害を抱える子どもは、ある特定のジャンルにおいて能力を発揮することがある。これは映画『レインマン』でも有名になった「サヴァン症候群」と言われるものだ。
赤平氏が語っている言葉が珠玉である。
「彼が将来ご飯を食べていける職業を一緒に見つけたい」
「息子が輝きながら生きていけるように支えてゆきたい」

これこそまさしく、私が自著『発達障害と少年犯罪』で伝えたかった「周囲の支援の重要性」であり、「周りの環境の大切さ」なのだ。

「政府広報オンライン」より

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