【今日の新聞から】非行少年の調査で明らかになった「虐待」の影響
法務省の法務総合研究所が2021年、少年院に入所していた13~19歳の少年(男子526人、女子65人)を対象に、18歳までにつらい体験をしたかどうか、12項目について調査をおこなった。それによると、「家族から殴る蹴るなどの身体の暴力を受けた」人が61.5%、「心が傷つくようなことを言われるといった精神的暴力を受けた」という人が43.8%に上った。「つらい体験をしたかどうか」のいずれかに該当する人は全体の87.6%にもなり、虐待体験の割合が高い女子に限ると94.6%に達した。
少年非行と子どものころの虐待などの「逆境体験」との関係の研究は1990年代から米国などでは進んでいる。しかし、日本ではそういった問題がしっかりと直視されてきたわけではない。
私は2016年の段階で、NNNドキュメントのドキュメンタリー『障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件との間に』やその書籍化『発達障害と少年犯罪』(新潮新書)で、少年犯罪と虐待との関
https://www.shinchosha.co.jp/book/610766/
関係を指摘した。そのときには、批判的な意見が多かった。だが、今回の法務省の調査はその指摘を裏付けるかたちとなった。
なぜ社会はその当時、「虐待」の存在を看過してしまったのか。
それは「木を見て森を見ず」と言える行為だ。日本ではなんとなく「認めたくないことから目を背ける」風潮があるように感じる。沖縄米軍基地問題や原発問題、さまざまな社会問題……自分たちの周りの痛ましい事件や由々しき問題を見ないように、あたかも「ないことのように」ふるまう傾向があるのではないだろうか。
少子化の流れの中で、「未来の宝」とも言える子どもたちへのケアは社会全体で可及的速やかに進めなければならない。同時に、虐待などをおこなってしまう保護者や家族の心の癒しや支援も必要だ。多角的な対策が今、求められている。
「NNNドキュメント」HPより