【おススメドラマ】Netflix『極悪女王』ー演者をあそこまで追い込む白石和彌監督の手腕に喝采!

Netflixで白石和彌総監督の『極悪女王』を視聴した。いろんな意味で物凄いドラマだった。
まずは、演者の気概が凄い。私がドラマ・プロデューサーをやっているときには正直言って、「もう少し〝命かけて〟やってみろよ!」と悪態をつきたくなるような若い俳優もいた。セリフがしっかりと入っていないため、何度もとちったり、リハやテストで適当な演技をしてテストにならなかったりなど、「俳優としての覚悟が薄い」例は枚挙にいとまがない


その点、このドラマの、特にプロレスラー役の演者の覚悟は半端じゃないと実感した。
とくに、主役のゆりやんレトリィバァ氏は最初は「ダンプ松本に全然似てないじゃん」と思っていたら、気がついたら「そっくり」に激変していた。ライオネス飛鳥の剛力彩芽氏や長与千種の唐田えりか氏も「見事」と言うしかない。剛力氏はモデル事務所のアイドル俳優というイメージしかなかったが(失礼!)、この作品で見直した。唐田氏に関しては、私は一度ドラマでご一緒してその当時から演技に対する真摯な姿勢にほれ込んでいただけに、例の一件があって残念に思っていた。しかし、そんなハンデを完全に吹き飛ばすくらいの頑張りを見せてくれた。もちろん、その周りのオーディションで役を勝ち取ったほかのプロレスラー役の俳優たちにも拍手喝采を送りたい。
普通ならスタントで撮影してしまう格闘シーンもほとんど本人が演じているという。怪我が絶えなかったことだろう。その苦労がしのばれるが、その成果は十分にあった。そんな彼女たちのリアルな姿を見るだけでもこのドラマの価値がある。編集の加藤ひとみ氏が「普通ならスタントにつなぐ編集をするところを、そのままワンカットで見せられる」と言っているのがよく理解できる。 プロデューサーの長谷川晴彦氏は私も何度か仕事をした優秀なクリエイターだ。「現場ではいろいろなことがありすぎて、学校の教頭のようだった」と語る。教頭はトラブル処理係のような存在。校長の監督を影で支える。そういう役目がいたからこそ、今回の素晴らしい作品が出来上がったのだと納得した。

そして、何よりも演者たちをそういった覚悟まで追い込んだ白石総監督の腕は相当なものだ。以前、このブログでも「大好きな人たち」のひとりとして挙げさせてもらったが、白石氏の作品に向き合うストイックな姿勢が、演者を動かしたことは想像に難くない。若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』の最後の方は、若松組の弟子の白石氏が任されてしまったという逸話が思い出される。今回の『極悪女王』は、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』の系譜をひく作品だ。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』も演者の気持ちの入り込みによる演技表現の半端なさに引き込まれた、壮絶な映画だった。

私は1986年にテレビ東京に入社した。2年目についた『ヤンヤン歌うスタジオ』で、クラッシュギャルズの歌の収録に立ち会った思い出がある。おそらく最後の方に近いテレビでの露出だろう。そんなことを思い出しながら、ドラマを堪能した。
演者の皆さん、素晴らしいドラマをありがとう! そして白石監督、編集の加藤氏、プロデューサーの長谷川氏もお疲れ様でした!!!プロの仕事を見せてもらいました。

「Netflix公式サイトより」

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