それは、『献灯使』の表紙に描かれていたのが、まさにこのハシビロコウだったからだ! こんな偶然に出会うとは思わなかった。しかし、私は「偶然はずべて必然だ」と考えている人間なので、なぜこの鳥が『献灯使』の表紙なのかを考えてみた。それは3つある。 ① 作品のテーマ=滅びゆく世界/環境破壊と響き合う象徴 『献灯使』の舞台は、ディストピア状況の日本。ハシビロコウは絶滅危惧種として知られ、“動かない鳥”としての独特の生態を持つ。環境崩壊後の日本の姿と響き合う象徴的モチーフとして、表紙に選ばれた可能性が高い。 ② “静止”と“生のギリギリの継続”の象徴 ハシビロコウは「動かない鳥」として有名だ。『献灯使』では、子どもは“壊れ物のように弱い”老人は“死ねないまま存在し続ける”という、“生の停滞”のような世界が描かれる。これがハシビロコウの静的な生態と響き合うと私は読んだ。 ③ 滅びゆく生命へのまなざしという多和田作品の特徴 中国新聞は、多和田葉子の表現者としての特徴について「この世の片隅でささやかに生きる存在を忘れず耳を澄ませる」と述べている。ハシビロコウという“珍しく、絶滅の危機に瀕した存在”を表紙に置くことは、多和田文学の“周縁の生命へのまなざし”と極めて相性が良い。