【おススメ書籍】ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史~文明の構造と人類の幸福』ー10年近くたっても読み返せる「名著」……「農業革命」は史上最大の「詐欺」⁉

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史~文明の構造と人類の幸福』を読み直した。この本が発売された当時は、私はこの本の出版社である河出書房新社から『ストーカー加害者:私から、逃げてください』という書籍を出版する準備をしていたので、すぐにその存在に気がついて読んだ。だが、そのときはテレビ業界人だったので、どうしても「ドキュメンタリーのネタを探す」ような視点で読んでしまっていた。
そしていま、環境が変わって、改めて読んでみたいと思った。単純に「興味がわいた」のだ。

素晴らしい名著だった。考古学や太古の歴史に興味がない人にとっては、とっつきにくいところもあるだろうが、いろいろな示唆を与えてくれた。映像もそうだが、文字というものも「自分の環境や状況が変わると、受けとらえ方や感じ方が変わるのだ」ということに改めて気づいた。また「興味を惹かれる箇所」や「感動する点」「心に残る文章」も異なってくる。
まず、目から鱗だったのが、歴史学者の著者からすれば、いまある考古学は〝かすかな〟証拠であり、実証にはならないという点だ。
「農業革命」を称して、「史上最大の詐欺」だと断言する下りが特に印象的だった。著者は、そう断言する理由を以下のように述べている。人類は農業革命によって手に入る食糧の総量を確かに増やすことはできたが、食糧の増加はより良い食生活やより長い余暇に結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。
そしてその責任は誰にあったのかという展開においては、王のせいでも聖職者や商人のせいでもない、犯人は、小麦、稲、ジャガイモなどの、一握りの植物種だと述べる。
「ホモ・サピエンスがそれらを栽培化したのではなく、逆にホモ・サピエンスがそれらに家畜化されたのだ」という主張はなるほどと唸らされた。
もうひとつ「なるほど」と思ったのは、世の中のあらゆることは「生物学的カテゴリー」と「文化的カテゴリー」に分類され、その考え方を応用してみれば腑に落ちるというものだ。男女の格差の問題もその二つの視点から観てみると理解ができるという。例えば、女性の自然な機能は出産することだとか、同性愛は不自然だとか主張しても、ほとんど意味がないと著者は切り捨てる。男らしさや女らしさを定義する法律や規範、権利、義務の大半は、生物学的な現実ではなく、人間の想像、すなわち「文化的カテゴリー」を反映しているというのである。
すべてが現代にはびこる様々な問題に当てはまり、示唆深い。
時間が経っても、何度でも読み返せる。そしてその度に、「違う発見」や「気づき」がある。それこそ「名著」というものだと確信した。

「河出書房新社」HPより

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