【おススメ書籍】40年前の日本テレビ「学生プロデューサー会議」同期の知人から贈られた『戦略的暇』は〝目から鱗の〟DD本だった
FBで友達申請をしてくれた森和哉氏。申し訳ないことに、私はすっかり忘れていたが、森氏が教えてくれたのは、森氏と私はあるご縁があるということだった。
それは1985年のこと。日本テレビが当時開催していた「学生プロデューサー会議」というものに私は参加していた。今で言う青田刈りの「就職セミナー」のようなものだ。参加者は月曜日から金曜日まで曜日ごとに10人ほどのチームに分けられ、そこに現役のクリエイター社員がつくという豪華なイベントだった。私たちは金曜日で、当時ビートたけし氏の「スーパージョッキー」を担当していた八田一郎氏が指導を務めた。
本稿の目的はこの話ではないので、詳しくは以下の森氏の2024年10月23日のFBをお読みいただきたいが、私の当時の印象などを細かく覚えていて、その驚異的な記憶力に感服させられた。私自身はほとんど記憶にない(申し訳ございません……)。
そして森氏が、プロデュースしたという書籍を送って来てくれた。4月24日に発売された『戦略的暇―人生を変える「新しい休み方」―』である。著者は、森氏がプロデューサーを務める一般社団法人日本デジタルデトックス協会理事であり、クーリエジャポンの編集者でもある森下彰大氏だ。クーリエジャポンの編集者という立場を活用して海外の知識人への取材をおこない、同時に数多くの文献に裏付けされたエビデンスはとても説得力がある。広くデジタルウェルビーイングの視点から「休む」ということの大切さについて述べている本著は読みごたえがあった。
これからさらに加速化する「デジタル社会」をどう生きるか……それは、私の大学の学生にも伝えたい人生の智慧だ。
この問題に対して、本書は3つのステップを用意している。
1.現代特有の脳疲労を癒す「新しい休み方」/DD(デジタル・デトックス)
2.コスパ・タイパからの脱出/時計時間デトックス
3.凝り固まった「私」を解き放つ/自分デトックス
このプロセスが実にわかりやすい。そしてその先にあるのが、ゲームチェンジャーとしての役目を果たす「スぺパ(スペースパフォーマンス)」というわけだ。
本書には感銘を受ける言葉が数多く収録され、すべてを紹介しきれないが、特に「力を発揮できないのはケイパビリティではなくキャパシティの問題だ」という記述はすとんと腑に落ち、すごく納得した。
多くの「知の巨人」たちの言葉を引用しているのも本書の魅力の一つだが、その挿入タイミングが絶妙なのも称賛ポイントだ。例えば、私が敬服する歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の「飛行機を作ったエンジニアの半数が『その飛行機が墜落して全員が死亡する可能性が10%ある』と告げたら、あなたはその飛行機に乗るだろうか」という言葉を引用し、AIが人類に不可逆的なダメージを与える危険性を訴えるハラリ氏の主張を紹介するなど、手が込んでいる。この箇所を読んだとき、私は恐ろしくなり思わず身震いをした。
しかし、森下氏はリスクをあおるだけでは終わらない。しっかりと解決法も提示していれる。付録の「数分でもOK! 今日からできるDD実践法」を読んで私はすぐにスマホの設定を変えた。
なかでももっとも納得できたのが「不便を楽しむ」ということだ。私たちは「便利」と引き換えに「多忙」を押し付けられてしまったのだ。「暇」をねん出するためには「便利」をデトックスすることだと悟りを得た気がした。
多くの啓示が得られる深い書籍だ。
40年前の縁が一冊の本との出会いを私に与えてくれた。長く生きることも、捨てたものではない。
「飛鳥新社」HPより
お褒めの言葉、ありがとうございます。
本稿がアップされてすぐに、若い著者・編集者から「とてもうれしいです!」との連絡が入りました。
この本で伝えたかったことをここまで的確に書き記していただけたことに驚きと感謝を覚えます、ともありました。
私からもお礼申し上げます。
40年前の細く長い縁を、若い世代の創作物がつないでくれました。若い人たちに感謝です。
そして私たちが若い世代に伝えるべき、残すべきものを振り返るよい機会になったようにも感じています。
田淵さんは大学教授として教壇に立ち、既にそのような取り組みをなさっていらっしゃいますが、私も少しでも近づきたいものです。
細く長い縁は、私からの一方的なラブコールでしたが、田淵さんは出会った40年前とまったく変わらぬナイスガイでした。
それにしても、こんなにもずっとナイスガイでいられる人っているのか?と敬服の言葉しかありません。
ありがとうございました。
森和哉様
コメントありがとうございます。
拙い言葉で、素晴らしい書籍の良さを充分に伝えられたかどうか不安ではありますが、
そのように言っていただいて、嬉しいです。
本当に「ご縁」というものは素敵ですね。
今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします!
田淵俊彦 拝