【お知らせ】日本映像学会映像人類学研究会11回研究会(2026年3月7日)のお知らせ
下記の通り、日本映像学会映像人類学研究会第11回研究会を、対面とZoomでのオンラインの同時ハイブリッドで開催します。
今回のゲストは、映画『佐藤忠男、映画の旅』を監督した 寺崎みずほ氏です。
寺崎氏は 桜美林大学を卒業後、改めて日本映画学校(現・日本映画大学)に学び直し、その後 NHK や文化庁フィルム制作事業などで経験を積んで長編映画監督へと至りました。大学での学びを経てから映像の専門教育に進み、現場経験を重ねて監督として作品を完成させた寺崎氏の歩みは、映像制作を志す学生はもちろん、すでに制作の現場で働くクリエイターや研究者にとっても、キャリア形成の多様な可能性を示す実例となります。
寺崎氏が晩年の佐藤氏に密着する中で見聞きした言葉やエピソードは、佐藤氏をよく知る参加者にとっても“記憶を共有する機会”となり、氏を偲ぶ時間としても意義を持つはずです。
本研究会では、寺崎氏が 2019 年から亡くなる 2022 年まで密着した映画評論家・佐藤忠男氏の人物像、思想、批評史、アジア映画へのまなざし、さらにはインド・ケーララ州での現地調査を通じて作品が立ち上がるプロセスを、作品制作の背景とともに掘り下げます。
同時に、ドキュメンタリー制作における観察・距離・倫理・構成・異文化理解など、映像人類学と映画研究が交差する領域について議論を深めます。
概要:現代社会は、情報の氾濫、価値観の揺らぎ、歴史的記憶の再検討、国際的な文化交流の変容など、多層的で複雑な課題を抱えている。そのなかでドキュメンタリーは、「個人」「社会」「世界」をつなぎ直すための観察と記述の方法として、重要性を増している。
映画『佐藤忠男、映画の旅』は、
・映画批評に 70 年以上を捧げ、150 冊を超える著作を遺した佐藤忠男の人生史、
・佐藤氏が“生涯のベストワン”と語ったインド映画 『魔法使いのおじいさん』(1979)の魅力と文化的背景、
以上の二つを縦軸として構成されたドキュメンタリーである。
寺崎監督は、佐藤氏への長期取材に加え、作品の背後にある文化的文脈を理解するため、映画の舞台となったケーララ州へ赴き、出演者や関係者への聞き取りを実施した。そこで語り出される、撮影当時の記憶や地域の空気は、佐藤氏が映画に見出した“素朴さ”“純度”“人の生きる喜び”と響き合い、作品の核心へと導く。
一方で、作品内では佐藤氏の人物像も丁寧に掘り下げられている。戦中の少年期、労働をしながら独学で批評を積み重ねた若き日、映画史研究の体系化、アジア映画の発掘と国際交流、そして晩年のゆっくりとした語りの中に宿る重み。寺崎監督は、言葉を慎重に選ぶ佐藤氏を急かさず、沈黙を受け止め、「待つ」という方法で被写体と向き合った。この姿勢は、映像人類学の観察手法とも深く通じている。
さらに注目したいのは、寺崎監督が大学での学びを経てから映画制作の専門教育へ進み、現場経験を積んで監督として活動するに至ったというキャリアの歩みである。桜美林大学を卒業した後、日本映画学校(現・日本映画大学)へ“学び直し”として進学した寺崎氏の進路は、映像制作の道が決して一本道ではないことを示している。このような多様なキャリア形成の実例は、映像分野を志す学生にとって将来像を考えるうえで大きな意義を持つ。
今回の研究会では、
・被写体との距離
・異文化理解と記述の方法
・批評史と映画史の交差
・国際映画交流の歴史的文脈
・“旅”という構成原理
・キャリア形成の多様性
といった多角的視点から議論し、映像表現と研究の両面を深める場とする。
日時:2026年3月7日(土)14時00分〜16時00分(予定)
形式: 対面とZoomによるオンラインの同時ハイブリッドで開催
場所:桜美林大学東京ひなたやまキャンパス(東京都町田市本町田2600-4)
https://www.obirin.ac.jp/access/tokyohinatayama/
*オンラインでの参加を希望される方には、研究会前日の18時までにZoomの招待を送らせていただきます。
参加費:無料 どなたでも参加できます。学生さんも歓迎です。お気軽にお申し込みください。若手制作者、若手研究者の方で興味がある方も是非ご参加ください。
参加申し込み方法:下記 Googleフォームからお申し込みください。ご質問、ご不明点がございましたら、以下のメールでお問い合わせください。参加者リスト作成などの準備のため、締め切りは一週間前の2026年2月28日(土)18:00厳守とさせていただきます。
Googleフォーム:https://forms.gle/MJUKatGzjJhRqy5e6
メールでお問い合わせ:visualanthropology2021@gmail.com
ねらい:
1. ドキュメンタリーにおける観察・倫理・距離の問題を再考する。
寺崎監督の 3 年間の密着取材を例に、映像人類学の視点から検討する。
2. 佐藤忠男氏の批評思想・アジア映画交流を文化史的に位置づけ直す。
国際映画祭や文化交流の歴史的意義を共有する。
3. インド・ケーララ州での調査から、異文化理解のプロセスを学ぶ。
地域の記憶・証言・風土が映像にどう反映されるかを考察する。
4. 寺崎氏が“学び直し”を経て映画監督へ至ったキャリアを紹介する。
一般大学から専門教育へ入り直し、現場を経て長編監督となった稀有な歩みは、映像分野を志す学生にとって現実的な励ましになる。
5. キャリア形成の多様性を示し、若手研究者・制作者の将来設計に資する。
*参加者の方は、なるべく事前に寺崎氏の作品『佐藤忠男、映画の旅』をご覧になってご参加ください。なお、『佐藤忠男、映画の旅』は3月3日からアテネ・フランセ文化センターで開催される「グループ現代 映像祭」の冒頭(3月3日㈫13:20~)で観ることもできます。詳しくは以下のHPでご確認ください。
☛https://athenee.net/culturalcenter/program/gu/groupgendai.html
さらに、4月4日㈯から下高井戸シネマ(京王線下高井戸駅)にて、一週間の上映予定です。併せてご確認ください。
また、寺崎氏が日本映画学校の一年次の実習「人間研究」で制作された映像作品『BUTAYA』を特別に提供していただく予定ですので、参加される方限定で事前視聴できるようにしたいと考えています(参加申し込み後、URLを配布予定)。
『BUTAYA』概要:「人間研究」とは、写真と音声で構成するドキュメンタリー実習である。発表はスライドで写真を映し、録音した音声と司会、演者の語りなどで行う。『BUTAYA』の舞台は、寺崎の友人の家、養豚農家である。父親が中心となり、養豚場を営んできたが、その夏に廃業する、という決意を下した。その父を中心に、家族の有り様を見つめた作品。
ゲストスピーカー略歴:寺崎 みずほMizuho TERASAKI
映画監督・ドキュメンタリーディレクター
1985年、神奈川県川崎市生まれ。桜美林大学英米文学科卒業後、日本映画学校入学。2010年、映画学校卒業後、映像制作会社グループ現代で働く。NHKの番組や文化庁のフィルム制作事業などの助手を経て、2015年NHKのセルフドキュメンタリー『極私的ドキュメンタリー にっぽんリアル』でディレクターデビュー。以後、NHK『ハートネットTV』など、介護や福祉の番組ディレクターを担当している。長編映画の監督は本作が初となる。
2014年 文化庁『平成25年度工業技術記録映画 細川紙』演出助手
2015年 NHK『極私的ドキュメンタリー にっぽんリアル 私とおさなじみ』演出
小学館 教育ビデオライブラリー『中国高校生日本語作文コンクール』演出
2016年 NHK大河ドラマ紀行『真田丸紀行』演出
2017以降 NHK「ハートネットTV 介護百人一首」「きょうの料理ビギナーズ」などを演出
司会・パネリスト:本研究会代表・田淵俊彦(桜美林大学)
運営:中垣恒太郎(専修大学)・西野毅史(桜美林大学)
式次第(予定):
14時00分〜 開会の挨拶、映像研究会のこれまで(第1回~第10回)の活動報告
14時15分〜 ゲストスピーカー・寺崎みずほ氏とのトークセッション(対面)
15時15分〜 参加者との意見交換
16時00分頃 終了予定
映像人類学研究会代表:田淵俊彦
日本映像学会HP:https://jasias.jp/archives/34153
日本映像学会Facebook: https://fb.me/e/8VP59CX2F

