【今日のタブチ】「通報に“報奨金”」という違和感――不安材料の“正体”と、行政が“たった一つ”やるべき本筋

茨城県が“不法就労の通報に報奨金を出す”という施策を進めている。
井川知事は「真面目に働く外国人を不安がらせる話には絶対にならない」と断言したが、果たしてその言葉通りの運用ができるのか。
そもそも茨城県は2024年、不法就労の摘発数が3452人で3年連続の全国最多という状況にある。就労先の約7割が農業分野だ。 国・県ともに通報は匿名で受け付けており、フォームやメールで簡単に送れる仕組みになっている。 さらに国の制度として、通報に1000〜5万円の報奨金まで付いている。

この条件が揃えば、“金目当ての通報”が生まれるのは当然だ。
匿名でできる以上、誤情報や嫌がらせの通報も混ざりやすい。入管庁が「誹謗中傷メールは業務妨害」と注意書きをわざわざしているのは、現実にそうした通報が一定数あるからだ。
「真面目な外国人を不安にさせない」と知事は言うが、誰がいつ自分を監視しているかわからない環境がつくられれば、不安にならないわけがない。日常の会話や行動ですら誤解される可能性があるとしたら、働く側は萎縮するだけだ

さらに問題の根本は、そもそも不法就労が増える背景に「雇用主側の順法意識の低下」があるという点だ。
雇う側が在留カードを確認せずに働かせてしまうケースや、偽造カードを見抜けないまま採用してしまう例も指摘されている。行政がまず手をつけるべきなのは、雇用側への徹底した指導と監査であって、市民に“通報の役割”を押しつけることではない。
にもかかわらず、「市民のみなさん、情報提供を」と呼びかける構図は、行政が担うべき監視責任を市民に分散し、実質的に“密告社会”を育てる方向に傾く。外国人労働者に対する偏見や差別が増幅されやすく、入管が誹謗中傷を警告している現実とも矛盾する

ここまで述べれば、答えは明白だろう。
やるなら報奨金は外すべきだし、「お気づきのことがあればお知らせください」で十分だ。匿名通報の仕組みは既に整っている。 報奨金という“強い刺激”を加える必要はない。
むしろ、茨城県がやるべきは、市民同士を監視させることではなく、雇用の現場そのものを健全化する仕組みづくりだ。ここでひとつ、もっと建設的な案を出したい。

通報に頼るのではなく、雇用主の“適正さ”を見える化する仕組みをつくればいい。
例えば、在留カードの確認、労働契約書、多言語説明、労働時間管理など、基本的な項目を雇用主が毎月オンラインで提出する方式にする。県はAIで不備を自動チェックし、不備が多い事業者だけ重点監査に回す。これなら行政が主役として責任を果たしつつ、無駄な通報を減らすことができる。
さらに、基準を満たした事業者には「適正雇用ラベル」を交付し、店舗や農地に掲示できるようにすれば、地域の信頼度も可視化できる消費者も、外国人労働者も、どこが安心できる事業者なのか一目で分かる。
これなら、報奨金で市民に監視を促す必要はなくなる。社会はもっと健全に回る。

監視を強めるより、仕組みを整えるほうが、はるかに健全で効果的だ。
茨城県はそろそろ、“通報を煽る方向”ではなく、“透明性を高める方向”へ舵を切るべきだ

「東京新聞デジタル」より

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